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慶明戦を決めた「逆転スクラム」


劣勢をはね返し、慶大逆転トライの起点となったスクラム。左から大山、安田。(撮影:松本かおり)


「耐えると言うより、押し切るつもりで」

 背番号18をつけて途中出場したPR大山祥平が、試合終盤のスクラムを振り返る。

 後半36分、慶應逆転のトライは、ゴール前スクラムからNO8山中侃(あきら)が持ち出し、飛び込んだ会心のプレーだった(G決まって28−24)。

 前半は慶應21−12明治。

 陣地支配で優勢だったのは序盤から明治のほうで、慶應がここぞのチャンスを決めてリードを奪って折り返した。ブレイクダウン、キックの攻防など両軍拮抗する中で、慶應にはこの日、大きな不安を抱えるプレーが一つあった。

 スクラムだ。
 
 明大SH福田健太主将は「チームとしてスクラムを武器としてきた」と語り、この試合でも圧倒していた。たとえば前半15分のトライは、明治が、慶應ボールのスクラムを押し切り、奪って獲得したものだ。

 後半36分の慶應スクラムは、明治がゴールを背負った地域。明治の中盤でのミスを突き、したたかに慶應が作ったチャンスだった。残り時間は4分ほど、スコアは慶應21−24明治の、勝負どころ。

 慶應はこの一本で8人がぐっと体を沈めた。数秒後、左方向へ流れたスクラムから、とっさにNO8山中が反対の右側へ持ち出して、手薄になった相手ディフェンスに当たり勝ってトライ。

 劣勢だった局面を挽回し、それを逆転トライにまでつなげてみせた。後半10分に同時に投入された二人のフロントローが、効いていた。冒頭の背番号18、右PR大山と、HO安田裕貴は、スクラムの改善を第一に頭に置いてピッチに入った。

「チームでは、リザーブのことをブースターという役割で呼んでいます」とPR大山。

「だから自分の仕事はチームを勢いづけること。あの状況なら、スクラムの流れを変えることが最重要です」(大山)

 3年生のHO安田は、試合前の金沢篤ヘッドコーチとの面談で、背番号16の役割を伝えられた。

「セットプレーが厳しいようだったら、すぐに代える、と。だから、メンタルの準備はしっかりできていました。出てすぐに100%でいけた」。足首のケガから復帰1戦目の大仕事になった。

 背番号16と18は指揮官の期待に応えた。

「リザーブの役割は果たせたかなと、思います。最後のスクラムも、本当は押し切りたかった」(安田)

「慶應は帝京や明治に比べると身長が低く、体重が軽い。それでも勝つためには低さを極めること。ヒットで当たり勝つこと」(大山)

 大山は186a、100`超の巨漢だが、だからこそ、慶應で生き残るには低さが重要だと言う。

「大柄な選手は当たった後に体勢が高くなりがち。そこに付け込まれてしまったら、8人の意識や努力が無駄になるので」(大山)

 歴代、強かった慶應にはいつも、強いフロントローがいた。今年、チーム内の1列目のポジション争いは熾烈(しれつ)。HOでは、前週まで先発は中本慶太郎(3年)、この日は9月入学の1年生、原田衛(桐蔭学園出身)がデビューを果たした。背番号18の大山はルーキーイヤーの昨年、この明治戦で先発を務めている。

「18と3の違いを埋めるには、練習から変えないと」(大山)

 それぞれの持ち味、覚悟と、チームのプライドを胸に、各チームの正位置争いも佳境に向かう。


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