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法大のウォーカー アレックス拓也が、海外で酪農とラグビーを両立したわけ。


法政大のウォーカー アレックス拓也。写真は9月24日の専修大戦(撮影:松本かおり)


 他者と違う道を歩む。言うは易く行うは難しのそんな人生設計を、ウォーカー アレックス拓也は具現化したいという。
 
 法大ラグビー部で3年目を迎えた今春から夏の終わりにかけ、単身でニュージーランドはカンタベリー地方へ留学。知人を介してつながりのできたイングランドの複数クラブに、今後のプレー映像を送付予定。卒業後のプロ契約を目指す。

「スキルももちろんそうですが、社会人に混ざってトレーニングしたことで身体と心がけが学べました。心がけというのは、しっかりとラグビーを楽しむということ。楽しむというのは、自分のマックスの力を出し切った時が楽しいよということ。そう(周りに)言われたことが、気持ちの面でよかった」

 日本に戻ってきたばかりの9月上旬、充実した口ぶりでラグビー王国での日々を語った。カンタベリーでは、地元のサザンというアマチュアクラブに参加。在籍選手の多くは働きながらラグビーに親しんでいて、ウォーカーもそれにならった。日本語の通じない環境で、酪農や皿洗いなどのアルバイトを経験した。

 学生選手の単身での海外留学には、近親者の支援が不可欠とされる。しかしこちらの青年は、「飛行機代は出してもらったのですが、それ以外はあえて、いらないと言いました」とのことだ。牛の世話とタックルを交互におこなった得難き過酷な日々を、しみじみと振り返る。

「朝4時半に起きて酪農をして、夕方までみっちり働いて、7時から8時半くらいまでラグビーの練習をやって。家に帰って寝る。大変でしたけど、いい経験になりました」

 身長184センチ、体重100キロ。東福岡高時代から地上戦での強さ、タックル後すぐに起き上がる意識などで際立ち、法大でも1年目から主力入り。時折、控えに回ることもあったが、それは授業参加のため直前練習に出づらかった時のことだ。

 今季もLO、FLでの出場が期待されたが、一時的にチームを離れる決断を下した。理由を聞かれると、こう話した。

「将来、海外に行きたい。その時の予行演習みたいな感じで」

 ナショナルチームの一員として大好きな日本を背負って戦うのも目標のひとつだが、何より海外でプロ選手になりたいという。だからニュージーランド留学は、目標が叶った後を見据えた「予行演習」と位置付けた。目論見通り、日本であまり使わない英会話能力を磨けた。ラグビーの技術などよりも、そちらの方に収穫があったようだ。

 2016年には、国際リーグのスーパーラグビーで日本のサンウルブズが発足。列島の選手の海外挑戦へのチャンネルは広がった。もっともアレックスは、「誰にもできないことをやってみたい」と強調する。

 オーストラリア人の父と日本人の母との間で生まれている。きっと、無意識のうちに開拓者精神を育んできた。

「自分にはせっかく英語というスキルがある。使わない手はない」

 ラグビーの母国と言われるイングランドのクラブの関係者からは、「再来年、加入したければ、今季と来季のプレー映像を審査する」と言われているようだ。いまは法大が加盟する関東大学リーグ戦1部で、圧倒的なパフォーマンスを披露せねばならない。日本のキャンパスでは牛の乳しぼりをする必要こそないが、苦労は買ってでもする。

 選手登録の都合で、今季は9月24日の2戦目に国内復帰。この日は東京・上柚木公園陸上競技場で専大とぶつかったが、33−38での逆転負けに泣いている。「自分の体力が底をついたときに相手にあおられた。運動量を上げないといけない」。目下、チームは2勝1敗。20日には埼玉・セナリオハウスフィールド三郷で、日大との4戦目に挑む。法大のLOで先発するウォーカーは、このゲームもオーディションと位置付けるだろう。
(文:向 風見也)

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