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笑顔なき勝者。王者サントリーが加速できない。

スクラムで圧力を受けるシーンも少なくなかった。(撮影/松本かおり)



 抜けるような青空の下で勝ったのに、表情は晴れなかった。
 10月7日、山梨・中銀スタジアムでおこなわれたサントリー×豊田自動織機は35-24。昨季王者が今季4勝目を挙げた。
 しかし、試合後の記者会見に現れた沢木敬介監督と流大主将に笑顔はちょっとしかなかった。

 勝利は手にしたもののボーナスポイントも含んだ勝ち点5の獲得はならず(トライ数は5-3)、スクラムで劣勢に回った。ミスも反則も多かった。
 豊田自動織機のレオン・ホールデン ヘッドコーチは、「(事前から)セットプレーはうちが上回れると考えていた。スクラムで何度もコラプシングを誘ったのに、相手にイエローカードが出なかったのは残念。出ていれば最後はどうなっていたか分からなかった」と80分を振り返った。
 勝者にとって、胸を張れる試合ではなかったことが伝わる。


 会見で試合へのコメントを求められた沢木監督は、「納得できる内容ではない」と言った。
 スクラムについては「織機がうちよりも強い。それだけ」。表情を変えずに、そう口を動かした。
 流主将も「見ての通り、自分たちの目指すべきラグビーではなかった。スタンダードの低いラグビーをやってしまった」と笑顔はなかった。


「修正点を直して、次の試合への準備を進める」と話す沢木監督は、具体的な修正点については明言しなかった。
「(改善すべき点は)きょうの試合に限ったことではないんですよ。そこは、前から明確になっています。いっぱいあるんだけど、何かを変えるとすべてが変わる。でも、そこを変えられていない。いまやっているのは、サントリーのアタックではない」


 指揮官は、禅問答のような言い回しで続けた。
「苦しみながら、模索しながら進んでいって、最後にちゃんとしたレベルを達成できたらいい。そういうシーズンになると思います。根本にあるもの(改善点)はシンプルなんです。でも、そこから逃げている。問題をいろんなことにすり替えた方がラクですから。そういったところを変えないといけない。タラレバで、あそこでこうしておけば良かった…と言ってるようでは、まだまだなんです」
 次戦の対サニックスに向け、ふたたび準備を進める。


 キャプテンは、今季、チームが波にのれない理由について、こう考えている。
「単純なミスをする。インディヴィジュアルなミスも多い。サントリーのスタイルは、ボールをしっかり持ってアタックするラグビーだからミスをするとうまくいかないのに、それをくり返している。スローフォワードじゃなかったら、パスがそれていなかったらではなく、そこを突き詰めないとファイナルに行けてももっと苦しむ。スキルにもメンタルにもスキがあるからミスが出る。ここまでそんな状態で来たことに、(主将として)責任を感じています」
 ただ、「下を向いていても仕方がない。(レギュラーシーズンの)残り2試合でどう成長できるかが大事」と続けた。


 この試合のラストシーン。残り1分、PKから速攻を仕掛けたサントリーはフェーズを重ね、フルタイムを知らせるホーンが鳴っても攻め続けた。
 しかし相手の手にパスが当たってボールはこぼれ、ノックオン。そこで笛が吹かれた。
 そのときの心境をキャプテンは「トライを取る。それだけでした」と話した。
「そういう気持ちでいましたが、そのときピッチに立っていた15人全員がトライを取りたい、取らないといけないという気持ちになれていたかというと、そうじゃなかったから、ああいう終わり方になったと思います」


 NO8ショーン・マクマーンなど主力にケガ人も少なくない。
「そのとき調子がいい者を起用する」(沢木監督)セレクションポリシーはぶれない。
 日本人選手を鍛え、強くする方針も同様だ。
 それでも、加速できない2連覇中の王者は、言い訳を探さない。ベクトルを自分たちに向け続ける。







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