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幼少期から父と…ウェイト、スクワット数値は専大トップ。坂本洋道の描く夢。


法政大戦の後半に2トライを決めた専修大の坂本洋道(撮影:松本かおり)


 きっと、普段から屈託のない人なのだろう。試合に勝ってリカバリー用のバナナの皮をむいていたところで記者に呼び止められ、「歴史を変える一戦で、頑張りました」と即答。グラウンド脇のアンツーカー上で即席のインタビューに応じ、健闘した味方の名が話題に挙がると当該の選手を「おーい」と自分のほうへ手招く。

 坂本洋道。専大ラグビー部のFLである。2015年に入学し、現在は同級生より1学年下の3年生だ。

「自分がトップリーガーになろうと思ったのは…」

 きちんとした自己紹介すら済ませていない取材者は、坂本が国内最高峰のトップリーグを目指しているのを「自分が…」の一言で知った。本人の思いがあふれる。

「2006年度の東芝対NECのトップリーグ決勝を観に行ったことで、そこでは浅野先生と大東(毅)さんが出ていて、それに刺激を受けてトップリーガーになりたいと思って、いままでラグビーを続けさせてもらった。そして大学ではその大東さんと(コーチと選手の間柄で)めぐり合えて、3列(FLなどのポジション)を極められて。いまにつながっているなと思います」

 9月24日、東京・上柚木公園陸上競技場。関東大学リーグ戦1部の2戦目に挑んだ。今季下部から昇格したばかりのチームは、前年度4位の法大を38−33で制し今季初白星を挙げた。専大が法大に勝ったのは、村田亙監督が主将だった1989年度以来のことだ。

 背番号6をつけたFWリーダーの坂本は、身体のぶつかり合いで明らかな存在感を示した。守っては強烈なロータックルで相手の落球や反則を誘い、攻めては低い前傾姿勢でのランで後半15分、28分とトライを決める。ノーサイド直前の逆転勝利を決めるまで、ブレイクダウン(ボール争奪局面)に何度も顔を出した。

 公式で「身長173センチ」と小柄ながら体重は「97キロ」。スクワットの数値はチームトップの240キロをマークする。腰回りがシャープで、下半身が太い。

 馬力が発揮されたシーンが、前半23分頃にあった。接点の脇で獲物を狙っていた坂本は、突っ込んでくるランナーを抱え上げ、なぎ倒し、その真上を乗り越えてターンオーバーを決めた。

 プレーの振り返りを求められると、その瞬間の心理とそこに至る背景を一緒に語り尽くす。

「あそこはフィジカルの見せ場なんで。普段、自分は積極的にウェイトをしていて。1部に上がって通用するのかなという部分はあったのですけど、こっちから仕掛けていかないとだめ。正面にいた選手が同じポジションの選手だったので負けないようにと、自分からペースを作っていきました」

 小学2年の頃、友だちに誘われて昭島ラグビースクールに入った。サッカー、柔道、水泳なども楽しんだが、ラグビーの「ぶつかる楽しさ」には叶わなかった。

「父親が宅急便の仕事をしていて、結構、家で筋トレをしていたんです。自分もそれに憧れて隣で筋トレをしていて、身体づくりもその時からできていた。スクールで小、中とも一緒だった自分の1こ上に、佐々木敬太という東京高に行った選手がいるんですけど、その人にだけは敵わなかったです。すごいハードプレーヤーだったのでけがをしてタックルができなくなったんですけど、その人の分まで、じゃないですけど、同じスクールとして身体を張ってかなきゃいけない。そういう思いも、今日(法大戦)につながったと思います。いろんな人のおかげで、いまがある」

 親元を離れて國學院栃木高に進むと決めたのは、中学2年時に観た2011年度の全国高校大会で同部が16強入りしていたからだ。高校でレギュラーになったのは、前述の「浅野先生」に出会った3年目から。新任だった元日本代表FLの浅野良太コーチは、「ポジションの基本、姿勢を本当に細かいところから教えてくれた」という。タックルやブレイクダウンでの仕事に必要なフォーム、意識、スキルを根本から洗い直せた。

「いま大学でやっているよりも細かいところにこだわって。高校3年からでも基本を作れたと思っています」

 大東コーチのいる専大を選んだのは、その「浅野先生」と出会ったばかりの頃。埼玉・熊谷ラグビー場で開催中だった全国高校選抜大会の期間中、村田監督に声をかけられたのだ。折しも、法大入学を目指しながら先方のセレクターに断られていた。「必要とされるところに行った方がいいよと親も言っていたので」。クラブ史上価値のある法大戦勝利は、坂本にとってもリベンジ達成という意味合いがあった。

 9月16日に東京・秩父宮ラグビー場でおこなわれた初戦では、昨季王者の大東大に21−53で敗北した専大。今度の法大戦で1勝1敗とし、10月8日、上柚木で前年度3位の流経大を迎え撃つ。向こうにはパワフルな留学生もいるが、坂本は自信を持って戦うだけだろう。

「いまのトレーナーの竹内さん、石川さん(専大の竹内明彦ストレングスプロコーチ、石川慎二S&Cトレーナー)からもウェイトを細かく教えてもらっています。肉がつきにくいんですけど、筋肉は増やさないとだめ。お菓子とか炭酸は摂らないので。コンビニで買うものも、裏の栄養表示を見て選んでいます」

 ストイックな元気印は、憧れのトップリーガーとなるべく一戦必勝を誓う。
(文:向 風見也)

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