セブンズ

スーパーサラリーマン、加納遼大。アジア大会での金メダル獲得で「感謝」を。

明治安田生命に入社して今年で4年目。現在26歳。(撮影/松本かおり)

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ワールドカップセブンズの大舞台でもプレーした。(撮影/松本かおり)



 7月にサンフランシスコでおこなわれたワールドカップ・セブンズに出場し、2トライを決めた。
「普通のサラリーマンでは経験できない大舞台に立たせてもらった。そのこと自体が一番の進歩。前進できました」
 明治安田生命保険相互会社に働く。
 男子セブンズ日本代表の加納遼大(かのう・りょうた)は、本社の人事部に籍を置く。ホーリーズの愛称を持つチームは、トップイーストリーグのディビジョン1が戦いのステージ。昨年は10チーム中9位の成績だった。

 きょう(8月30日)から始まるアジア競技大会のラグビー(7人制)。加納はワールドカップに続いて大舞台を踏む。
 同じ代表チームの仲間は全員がトップリーグの経験者だ。
 ただひとり、仕事重視の環境の中で実力を蓄えてきた。

 そんな加納に変化が起きている。
 2020年夏に開催される東京オリンピックまで残り約2年。これまで以上に、ラグビー中心の生活を送る。
 ラグビーに専心したい自分の覚悟を会社に話した。努力してきた日常と、残してきた結果を知っているから、協力の快諾をもらった。
「社長とも話す機会をいただき、ラグビーは若いうちしかできない、頑張れと言っていただきました」

 合宿や遠征が多く、定期的な業務をこなすのは難しい。できるのは、出社できるときに周囲のサポートに就くぐらいだ。
「皆さんに応援してもらっています。いまは、代表活動のないときでも週に2日ぐらいの出社でいいと認められています。普段は小澤(大)さんや林(大成/ともにセブンズ専従契約選手)と練習しています」
 明治安田生命には、他にボート部の選手も会社の理解を得て強化し、アジア競技大会に出場している選手もいる。加納も含め、会社の大きな期待を受けている。

 葛飾ラグビースクールで楕円球を追い始め、中学時代はベイ東京ジュニアラグビークラブで成長し、茨城の常総学院高校に進学した。
 明大時代はSHとして活躍するも、3年時はスタメン落ちすることも少なくなかった。
 当時をこう振り返る。
「クサった時期もありました」
 そんな気持ちのまま毎日毎日練習をくり返し、「ラグビーを嫌いになりかけていた」気がした。

 トップリーグ入りを希望していたが思いは叶わず、就活を経て明治安田生命への就職が決まった。「ラグビーは趣味程度に」と考えていたが、この入社が転機になる。
 会社のラグビー部の空気が自分を変えた。
「練習に参加してみたらキツイことをやっていました。週に2日、3日しかない練習にみんなが真剣に取り組んでいる。(部員全員が)本当にラグビーが好きなんだな、と強く感じました」

 そんな環境の中に身を置いてあらためて感じた。
「自分もラグビーが好きだ、と。また頑張ろうと思いました。そうなったから、いまがあると思います。だらけた生活をしていて、最初に(代表に)練習生として呼ばれたときに動けなかったらそこで終わっていた」
 気持ちあらたに真摯にラグビーと向き合っていたから、突然訪れたチャンスをつかめた。
 2015年の春に入社し、初めて代表チームの候補に入ったのが翌年の秋。2017年1月のワールドラグビー・セブンズシリーズ、NZ大会に参加して以来、同シリーズの6大会に出場し、ワールドカップ予選、ワールドカップと世界の舞台を踏んできた。

 最初に代表候補合宿に参加したときのことを覚えている。
「自分の強みを出せば意外といけるな、と感じたんです。でも、セブンズは1日に何試合も戦う。体力的にも大変ですが、精神面のオンとオフ、その切り替えを何度もおこなうことが難しい。その点では、経験してきている人たちと比べて、まったく劣っていました」
 そんな特殊な競技に特化してやってきた。
 サラリーマンではあるけれど、いまは、体も心もセブンズのプロ。そう自覚しているし、自信もある。

 だから思う。
 2019年のワールドカップ(15人制)が終わった後、セブンズ挑戦に手を挙げる人たちが出てきても負けるわけにはいかないと。
「セブンズと15人制はまったく違う。新しく来た(セブンズを初めてプレーする)選手にコロッと負けるなら、それくらいの実力しかなかったということ。違いを見せつけられるような実力を持っていたいですね」
 セブンズをメインにしてきた生活からセブンズ100パーセントとしたのだから、その成果を示したい。

 2020年まで競争は続く。
「(いつ代表スコッドから外れるか分からない)リスクはある。それは理解しています。だからこそ、そこに食らいつくために日々トレーニングをして、セブンズを考え続けなければいけない」
 そんな生活を送ることを許してくれた会社の期待に応えたい。
「社会人になり、ピッチの中でも外でも考えて動くようになって、プレーが伸びたと思っています」
 会社のアスリートへのリスペクト。競技者の会社への感謝。
 加納は、その両輪で成長を続けている。
 インドネシアで金メダルを首にかけ、最高の報告をしたい。







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