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節目の夏、「メンタル講習」から。創部90年の日大ラグビー部。

精神科医兼健康スポーツ医の木村好珠さん。

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徐々に選手たちからの質問も増えた。



 異例の「座学」から夏の強化をスタートさせた。
 ことし創部90年を迎えた日本大学ラグビー部は、夏合宿に先駆けて東京都稲城市のグラウンドで早朝・朝・夜の三部練習を敢行。その序盤の今月始め、精神科医兼健康スポーツ医の木村好珠(きむら・このみ)さんを招き、「スポーツ選手のメンタル」をテーマに講習会を開いた。
「7試合で5勝以上」という節目のシーズンの目標に向け、例年と違ったことに取り組む意図。練習を効率よく結果に繋げるための試みだ。

 木村さんは、女医とタレントの二刀流で活躍中。Jリーグ下部組織を指導するなど、競技者のメンタル構築のための講演などを積極的に請け負っている。ラグビーに関わるのは初めてだが、サッカー日本代表やクリスチアーノ・ロナウドの事例なども紹介し、学生向けに分かりやすくレクチャーした。
「ラグビー関係者を呼ぶと、チームに合わなかったときに冷めてしまうかもしれない。他のスポーツの話の方が刺激になる」と中野克己監督。
 他競技部の指導者も訪れる中、選手は熱心にメモを取り、ビジネスでも使われるPlan(目標設定)Do(練習や試合)Check(振り返り)Act(問題解決・改善)の「PDCAサイクル」の解説などに聴き入った。

 関東リーグ戦1部にあって一昨年は全敗で入替戦に回り、昨年は2勝で6位。2013年を最後に大学選手権に出場できていない日大。
 昨年、「アスレティックパーク稲城」と銘打ち、人工芝の専用グラウンドと部員寮などが完成した。朝晩ブッフェ形式の食堂、自由に使えるウエイトトレーニング場や酸素キャビンなど、他大学がうらやみ、見学に訪れた高校生が憧れる環境は整った。
 有望な新人生も多く加入。あとは結果を掴むだけの段階で、物足りなかったのが選手のメンタル面だ。
「特に上級生に、性格が優しくおとなしい選手が多い」
 就任3年目の伊藤武ヘッドコーチはそう明かす。FL今要(こん・かなめ)主将も、「試合中に状況が厳しいと雰囲気が暗くなって、立て直せなくなっていた」。劣勢で奮い立てない弱点が目についた。

 今回の講習会でも象徴的な場面が。首脳陣が学生との年齢の近さや親しみやすさを考慮して木村さんに依頼したが、美人女医を前にした緊張や照れもあってか、なかなか選手から質問が出ない。「せっかくの機会」と促され、ようやく数人が「ミスを引きずってしまう性格をどうしたら」「将来の夢に向けてどうすれば」など発言。徐々に有意義な質疑応答の場にできた。
 木村さんは講習後、「(選手の)優しさを感じ、チームスポーツには向いていると思う。ただ、一流選手ほど、悔しさや喜びの感情を出すのは当たり前。遠慮せず個を出していくことが大事」と印象を語った。

「あと一歩で全国大会、もうひと伸びで高校代表という無名の子達の気持ちに火をつけて鍛えてきたのが日大」
 一昨年に現場復帰した中野監督は、リーグ戦に旋風を起こしてきた90年代から2000年初頭をそう振り返る。
「チャレンジの気持ちがある子がもっと増えてくれればと思っている」
 伊藤ヘッドコーチも「かつてのチームカラーに戻し、FWを軸にガツガツと前に出るラグビーをやりたい」。そのためにも、強い精神力は不可欠だ。

 春にはアメリカンフットボール部の問題が起きた。性質は異なるが、ラグビー部も不祥事による降格を経験した過去がある。各報道で周知の通り、多くの人に勘違いされた。落とし物を拾って届けた部員に「盗んだのではないか」や「体が大きくて威圧感がある」という苦情まで。
 中野監督は「あえてポジティブに言えば」と前置きし、「フェアプレーやグラウンド外でも襟を正すのは大前提。何度も言い聞かせるよりも、今回のことで自分たちが常に見られていると意識するきっかけになったのでは」。
 世間からの注目も、選手を成長させると信じている。

 メンタルや目標設定の重要性を浸透させ、強化を期す夏は本格化する。
 9月のシーズン開幕から、流経大、東海大、大東大の順に対戦。いずれかを破らなければ5勝以上は叶わない。「目標に向け、個々もチームも厳しい夏を越えていく」と今主将。強い気持ちで鍛え、昨季の3強を崩したい。







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