女子

初ラグビー。サクラセブンズへ熱を送り続けた女子たち。戸畑高校応援団

右から4人目が松田萌愛団長。(撮影/松本かおり)

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試合の合間にスタンドで勉強もした。(撮影/松本かおり)



 太鼓の音と気合いの入ったかけ声は選手たちに届いた。
 戸畑高校応援団がミクニワールドスタジアムに駆けつけ、世界に挑む女子セブンズ日本代表(以下、サクラセブンズ)を後押しした。
 4月21日から2日間に渡っておこなわれたHSBCワールドラグビー 女子セブンズシリーズ 北九州大会。学ランの高校生たちが国際大会をにぎやかにした。

 戸畑高校は、同市戸畑区にある県立の進学校だ。地元の人たちには「とこう」の愛称で親しまれる。
 応援団も60年を超える歴史がある。今回の参戦は、同応援団のOBが知人のラグビー関係者から依頼を受けて実現した。
 サクラセブンズの登場に合わせて応援した9人は、全員が女子だった。大会に合わせたわけではない。現在応援団に所属する12人は、3人のマネージャーも含めて全員が女子。10数年前からそうなった。
 以前は男子だけだったが、女子も認めるようになり、いつの間にか男子団員がゼロに。以来、その状態が10数年続いている。

 戸畑高校にはラグビー部はない。だから応援団も、普段の活動はラグビーとは無縁だ。
 野球部の公式戦を球場で応援したり、各部が大会に向かう前にエールを送るほか、学校の行事でもみんなの前に立つ。
「戸高祭(とこうさい/文化祭)、体育大会(運動会)、3年生を送り出す予餞会の際、校歌や応援歌を歌うときも私たちが前に出ます」
 団長を務める松田萌愛(まつだ・もえ)さんは、今回はじめてラグビーを見た。
「迫力にビックリしました」
 サクラセブンズに、北九州市の門司学園高校出身の長田いろは(アルカス熊谷)がいることを前日に知り、「日本代表に入って凄いですね。応援させていただいて光栄です」と話した。

 松田さんは、第63代の応援団長。中学時代はソフトテニス部だった。当時を知る人が現在の姿を知ると驚く。
 高校入学後、当時の団長の姿が格好良くて憧れ、入団を決めた。
「声が聞こえて力になった。プレーをしている人たちにそう言ってもらったとき、やり甲斐を感じます。応援団に入って礼儀を重んじるようになりました。そういうところが以前の自分とは変わったな、と思います」
 高校の制服はブレザーも、応援団の活動時には学ランに着替える。親戚から調達する団員が多いが、そういった環境にないひとのため、応援団として引き継いでいるものも何着か。髪はポニーテールが基本。うしろで結べない長さの人は、オールバックにする。

 スタジアム内では3年生は下駄、下級生は裸足で動く。そういった古き伝統がいくつかある。
 最近の流れ、特に女性ばかりの集団にはそぐわないと思われるかもしれないが、団長は無くすことは簡単だけど、昔からあることを継承することも大切だと思っている。
 何より、自分たちは女子応援団ではなく応援団だ。だから、長く先輩たちがやってきたように活動している。そして、それを引き継ぐ。
「女子だけの応援団だから珍しい。そういったことで注目されるのでなく、他の部活動をしている人たちと同じようにみてほしい。戸高の応援団らしく活動を続けていきたいです」
 男子の希望者がいれば、もちろん受け入れる。

 応援の振り付けは、一般的には演舞と言われるが、戸高の応援団では伝統的に「演武」と表す。力強く動き、自分たちも選手たちと一緒に相手と戦う気迫で応援する。
 だから動きにもこだわる。平日から腕や指の角度を追求して練習を重ね、全員の呼吸が合うように連係をとる。
 今大会の2日間、サクラセブンズの入場前から始まる彼女たちの応援に合わせ、周囲のファンも大声をあげた。チームは全敗に終わったが、稲田仁ヘッドコーチも「負けても負けても、ファンが最後まで大きな声で応援し続けてくれたことが本当に嬉しかった。なんとか勝つ姿を見せたかった」と感謝の気持ちを口にした。

 ラストゲームのカナダ戦で先制トライを挙げ、スタンドを喜ばせた地元っこの長田は言った。
「応援団の太鼓や声、よく聞こえました。私の幼い頃からの友だちも、(戸畑高校の)応援団の団長をやっていたんですよ」
 いちばん嬉しい言葉を、北九州から世界に出ていったヒロインが言ってくれた。
 ちなみに松田団長は大学に進学したら英語を勉強し、将来はホテルで働きたいと思っている。自分も世界を舞台に活躍したい。

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気合いの入った応援はピッチの選手たちに届いた。(撮影/松本かおり)
 





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