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「自分の成長につなげたい」。松島幸太朗にまだあった成長の余地。

すべての時間が成長の糧。まだまだ進化し続けられる。(撮影/松本かおり)



 2017年度のトップリーグMVPに輝いた25歳が、スーパーラグビーで貴重な経験を積んでいる。

 スーパーラグビー参戦3年目のサンウルブズは、4月14日、東京・秩父宮ラグビー場でおこなわれた第9節ブルーズ戦で、前半を10−5とリードして折り返したものの、後半3トライを浴びて10−24で逆転負けを喫した。

 この日フルバックで先発した松島幸太朗は、後半12分にヘイデン・パーカーと途中交替。パーカーがスタンドオフの位置に入り、それまでスタンドオフを務めていた田村がフルバックに下がった。

 松島の途中交替は今季出場の4試合で初めて。その理由について、サンウルブズのジェイミー・ジョセフHC(ヘッドコーチ)は、記者会見で取材陣の質問に応じる形で回答した。

 会見で2番目に質問権を与えられた取材者が、ジョセフHCに松島を交替した理由について尋ねると、ジョセフHCは落ち着いた声色で理由を語った。
 
 続いてチーム通訳が、ジョセフHCの言葉として以下のように話した。

「松島を下げた理由はタックルミスが非常に多かったということで、そういう決断に至りました。この3週間のなかで特に顕著に表れていたのが、1対1のタックルをミスすると、やはり失点につながって、そこでどんどんゲームの展開が悪循環になっていってしまっていた、ということがあります。やはりタックルをできない選手というのは変更せざるをえない状況に追い込まれています」

 サンウルブズは前節のワラターズ戦で、巨漢WTBタンゲレ・ナイヤラボロに苦戦した。

 前半6分のSHジェイク・ゴードンの先制トライは、エリア大外にいたWTBナイヤラボロの突破が大きな起点。後半32分には同じくエリア大外の防御をWTBナイヤラボロに貫かれ、トライを許した。

 松島はこのワラターズ戦の2つのトライ、そしてブルーズ戦でも前半28分のWTBジョーダン・ハイランド、後半10分のNO8アキラ・イオアネの同点トライにディフェンダーの一人として関わっていた。

 サンウルブズの記者会見が終わると、記者たちは秩父宮ラグビー場内の取材エリアに移動し、着替えを終えた選手たちへインタビューを行った。
 
 松島が登場すると記者が殺到。松島は敗戦直後の感情を抑え、それからチーム関係者に遮られるまで質問に応じ続けた。
 
 そこで5番目の質問として「途中で交替を命じられた時はどういう気持ちでしたか」と投げかけられると、松島は以下のように答えた。

「僕はよく分からなかったですね。ベンチに帰っても『どうしたの』という感じだったので。ジェイミー(・ジョセフHC)に聞いてみないと分からないですね」

 続けて、タックルを外された感覚はあったかという問いに対して、松島は「あります」と答えた。

 ここで記者から、ディフェンスするには不利な状況に見えた、と声が上がった。

 ワラターズ戦、ブルーズ戦の上記4トライのうち、少なくとも3トライは、松島以前のディフェンダーが相手の勢いを削ぐことができず、全速力の相手との1対1を余儀なくされていた。

「それを外してしまったのも僕の責任ですけど、それで替えられるのであればそこまで必要じゃないのかな・・・・・・という気持ちです」

「フルバックのポジションで止めなきゃいけないですけど、こういうディフェンス・システムなので。1対1の部分が多くなるディフェンス・システムで、そこを自分的にはしっかり止めたいという気持ちはありますけど、こういうレベルになってくると簡単には止められないので」

 サンウルブズは大枠として、防御ラインを素早く押し上げ、相手をゲインラインの前で止めるディフェンスを採用している。

 ジョセフHCは3月24日のチーフス戦後の記者会見で、「前に出るがゆえにディフェンスが崩壊してしまうことがあり、そこはリスクを伴いますが、上手くいくときは非常に機能し、相手に圧力を加えることができる」と語っている。
 
 その言葉通り、第5節ライオンズ戦では効果てき面で、2季連続準優勝の強豪を38−40と大いに苦しめていた。

 一方で、ワラターズ戦やブルーズ戦のように、押し上げた防御ラインの頭を越えるようにエリア外側へボールを運ばれ、そこでタックル精度が落ちると危機に陥ってしまう。
 
 そこで重要になるのが、主にエリア外側の防御を担うバックスリー(WTB、FB)のディフェンスだが、サンウルブズは現状、バックスリーのタックル精度に苦しんでいる。

『FOX SPORTS』がウェブ上で提供しているスーパーラグビー2018のスタッツ(統計数値)では、サンウルブズの平均ミスタックル数、その下位10人のうち6人が、今季バックスリーで先発経験のある選手だ。

 サンウルブズに顕著なこのデータは、タックル精度の向上が、バックスリー全体の課題であることを示す。
 
 日本代表28キャップを保持する松島は、スーパーラグビーではワラターズ(2015)、レベルズ(2016)、サンウルブズ(2017〜)を経験し、トップリーグではサントリーで2017年度のリーグ2連覇などを通じ、2015年ワールドカップ後も成長を続けてきた。
 
 そんな松島は、この機会をさらなる成長につなげたいと考えている。
 
 取材エリアでの質疑応答の最後、記者が今後の意気込みについて問いかけると、松島は答えた。

「まずは替えられたということをしっかり話して、どこが悪かったというのかというのを話して、自分の成長につなげたいなと思います」

 この時点で交替理由を告げられていなかった松島は、これからジョセフHCと話し合い、自身の成長につなげたい、と語った。

 ジャパンが誇る才能が、国際舞台で成長の余地を実感する――。

 日本ラグビーにとって歓迎すべき展開が、松島の身にも起きている。
(文/多羅正崇)







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