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6連敗サンウルブズの光源。2度目来日のマイケル・リトルは「試されている」


ワラターズ戦でトライを挙げるサンウルブズのマイケル・リトル(撮影:塩隆)

 日本を離れる際、それまで住んでいた家の壁に落書きを残したのではという逸話がある。確認を求められた本人は、笑って否定する。

「いや、覚えていません。弟ではないでしょうか。弟は4人います」

 当時すでに、群馬県にある大泉町立西小学校の4年生だった。確かに、紙でないところへ絵を描かなくなるには十分な年齢だ。ちなみにその頃この国にいた理由は、父の仕事のためである。ラグビーのニュージーランド代表だったウォルター・リトルが日本の三洋電機(現 パナソニック)でプレーしていたため、息子のマイケル・リトルは日本の公教育を受けていた。

 1993年3月、イタリアのローマで生まれた。列島を離れてから時間が経った2013年から、母国のニュージーランドで本格的なラグビー選手としてのキャリアをスタートさせる。

 単身での再来日が叶ったのは2017年だ。三菱重工相模原の新外国人として活躍。そのパフォーマンスが認められ、日本からスーパーラグビーへ挑むサンウルブズと契約する。2018年2月から、ニュージーランドなど計5か国のクラブからなる国際リーグへ挑む。

 落書きの件を問われたのは、そのスーパーラグビーの試合後の取材機会でのことだった。アスリートとして大きなチャンスをつかんでいる現状については、こう話す。

「日本では下部リーグにいる三菱重工相模原からスーパーラグビーへ来たことは、大きなステップアップだと思います。ただただ幸運だな、と思います。いまの首脳陣に見出してもらい、さらにレベルアップができるかを試されている。この後も、努力を続けるだけです」
 
 開幕6連敗と苦しむサンウルブズにあって、リトルの存在は明るい材料のひとつだ。

 カールのかかった金髪を後ろへ束ねた25歳は、第4節でデビューすると休止だった第7節を挟み4戦連続で先発出場中だ。身長183センチ、89キロという公式サイズよりもコンパクトかもしれぬボディで、突破役のインサイドCTBを務める。力で、速さで、フットワークで、大男らの壁をこじ開ける。

 4月7日の東京・秩父宮ラグビー場では、第8節にワラターズを相手に躍動する。

 前半11分、敵陣ゴール前左のスクラムからSHの流大主将が球を受け取ると、先陣を切ってゲインラインへ駆け込む。流からゴールラインとほぼ平行に映るパスをもらい、タックラーに激突。一度は前方へ倒れ込んだものの、目の前に他の防御がいないと見るや再度、起立し、トライラインの向こうへ駆け抜けた(直後のゴール成功で7−7)。

 さらに23分には、自陣ゴール前左のラインアウトからパスをもらって目の前の網をかいくぐる。追いすがるランナーも振り切り、左タッチライン際を快走する。最後はLOのサム・ワイクスへアシストパスを通し、トライを演出した(直後のゴール成功で14−24)。

 この午後、走行距離にあたるゲインメーターは132メートルで、球を持って前進したボールキャリーの数は15回。いずれもチーム最多を記録した。

「(トライシーンは)練習通りのシチュエーションです。チームのS&Cスタッフには助けられています。彼らのもとで鍛えていると、自ずとランに力が出る」

 ラグビー選手は、生まれた国以外でも代表チームに入れる。他国での代表選出経験がなければ、当該国へ3年以上続けて住むことでその権利が得られる。現行ルール上は2020年から日本代表を目指せるリトルは、将来的にも日本でプレーしたいという。

 まずはサンウルブズで、爪痕を残したい。この日、守ってはタックル4本中2本を失敗。チームとしても防御ラインが連携を乱し、29−50と大敗している。だから自分にも課題があるのだと、リトルは言う。

「(個人的な課題は)1対1のタックルの精度を上げていくこと。シンプルです。防御のシステム自体は悪くない。これからは個々のミスタックルを減らすこと、もしミスタックルが起きたら互いにカバーし合うことが大事になるのではないでしょうか。チームとしても、ひたすらタックルをしていくことに尽きる」

 三洋電機からパナソニックに名称変更したクラブの現関係者いわく、「あの土地で生まれ育ったのだから、きっと彼にはブラジル人の友だちもたくさんいるでしょう」。くしくもサンウルブズも、ジョージア、南アフリカなどから選手を集めている。多国籍軍で揉まれるリトルは、北関東の友へ日本代表入りを伝えられるだろうか。
(文:向 風見也)

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