国内

ウィリアムズ海、実力者揃いの明大で下した「強みを活かす」決断とは。


イェール大との親善試合に出場した明治大のウィリアムズ海(撮影:松本かおり)

 明大が前半18分までに43−0とスコアを広げると、対するイェール大(アメリカ)の首脳陣がレフリー団や明大陣営に相談をもちかける。

 けがの予防などを理由に、当初決まっていた「40分×2」の練習試合は「20×2」に縮小した。それでも明大は、100−0というスコアでノーサイドを迎える。3月17日、東京・明大八幡山グラウンドで組まれた国際親善試合は、思わぬ形で幕を閉じた。

 この日の明大のメンバーは、2月のシドニー大(オーストラリア)とのゲームで出番のなかった選手を中心に編成された。レギュラー定着を目指す若手にとっては、絶好のアピール機会だった。なかでもこのゲームを自分との戦いと見ていた1人が、新2年のウィリアムズ海である。

 昨季終了後、ずっとプレーしてきたタッチライン際のWTBから、密集戦へ顔を出すFLにコンバートしていた。この日は、未経験という新ポジションへ転向して初の実戦。わずか20分間の出番にも、明確な目標を持って臨んでいた。

「相手が…というよりも、自分が練習してきたこと、自分のいいところを試合で出せるかということを考えていました」

 ふたを開ければ、防御の隙間をえぐるランを披露。2トライを奪い、安どの表情だった。

 オーストラリアから来日していた父のディビッドさんの影響で、小学4年時から北条ラグビースクール(愛媛)へ通うようになった。

「父さんが家でワラビーズの試合を観ていて…。かっこいいなと思って、始めました」

 ワラビーズことオーストラリア代表は、ワールドカップ優勝経験のある世界的強豪だ。楕円球に触れていない父が家のテレビでラグビーを観ること、その影響で息子がラグビーを始めることは、ウィリアムズ家にとっては自然なことだった。

 当初はCTBを務め、北条北中、北条高ではスピードあふれるWTB兼FBとして評価された。

 大学日本一12回という明大の門を叩いたのは、同じ北条高卒で3学年上の渡部寛太が在学していたこと、高校時代に味わえなかった全国での覇権争いを経験したかったことに起因する。

 セレクション合格を経て上京も、ウィリアムズは「最初はレベルが高くて怖気づくこともあった」。同級生のWTB、FBに山沢京平、猿田湧といった高校日本代表が揃うなか、首脳陣には高校時代よりも高度な動きをリクエストされた。特に陣地を奪い合うキックの質や防御の連携など、「僕の得意ではない部分を要求されることが多かった」。戸惑うことが増えた。

 もっともウィリアムズは、「通用する部分もあった」とも自己分析していた。

 新シーズンから監督となる当時の田中澄憲ヘッドコーチと話し合いを重ね、ついにコンバートを決める。それは、「通用する部分」に賭けるという決断でもあった。

 本人の思いはこうだ。

「WTBではうまく自分の強みを出せなかったのですが、練習中にFWコーチの滝澤(佳之)さんに目をかけてもらって…。まずは滝澤さんがチームに話してくれて、澄憲さんから『コンバート、してみないか』と。WTBでやるよりも自分の強みを活かせると思いました。タックル、ディフェンスのしつこさ、運動量という、通用する部分を磨いていかなきゃな…と思いました。まだモールなどのきついことは(練習で)やっていないのでなんとも言えませんが、いまのところはいい感じです」

 身長は公式で「183センチ」、体重は自己申告で「90キロくらい」である。「入学したての時は79キロくらいでした。スピードを失わない程度に体重を増やしたいです」。他の部員によれば、グラウンド脇の寮ではFLの新4年でレギュラーの井上遼と同部屋だという。スキルを習得するには最適な環境だ。

 田中新監督は言う。

「BK(WTBなどのボールを動かすポジション群)としていろいろなことを考えるのが難しいと、彼も悩んでいたんです。ただ、もともと身体が強く、下にある(相手の)ボールを獲り返すのも得意だった。だから『FLもやってみるか』と聞いたら『やってみたい』ということでした。悶々とするよりは、本人がやりたいと思ったことをやった方がいい。身体も大きくしていて、意欲的にやってくれています」

 当の本人は、「コンバートをして満足…ではなく、貪欲にプレーする。いずれは紫紺(主力組のジャージィ)を着たいです」とも話す。与えられた環境をフルに活かし、日本一奪還への起爆剤となりたい。
(文:向 風見也)

R80PC2RMワールドカップ2019ラグリパcolumn2