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トヨタ・アプロンの牙、パナ・ポーコックの一手。接戦生んだプレーの深層とは。


トヨタの小原にタックルするパナソニックの山沢。写真右端がアプロン(撮影:早浪章弘)

<トップリーグ 2017−18 プレーオフ 兼 日本選手権準決勝>
パナソニック 17−11 トヨタ自動車
(2018年1月6日/大阪・ヤンマースタジアム長居)


 場内にホーンが響きノーサイドを伝える。6点リードのパナソニックが持っているボールを蹴り出して、試合を終えそうだった。

 トヨタ自動車のFBジオ・アプロンは、あきらめなかった。
 
 密集の陰から、球を出そうとする相手のSH内田啓介に飛びかかる。場所はハーフ線付近右だ。球を奪えば、逆転勝利が狙えそうだった。
 
 笛が鳴る。
 
 大槻卓レフリーは、「全員、地面で…」。接点にいた他の仲間の動きが、妨害行為と見なされた。

 アプロンはこうだ。

「最後の瞬間までファイトする姿勢はお見せできたと思います」

 国内4強での短期決戦のひとつは、小差が結果を決めた。序盤は互いに敵陣深い位置で、相手の圧力を受ける。球を乱す。

 それでも前回の直接対決を43−16で制したパナソニックは、前半13、36分とトライを決めた。どちらの場面も、球を大きく動かしながらの中央突破によって生まれた。

 なかでもCTBディグビ・イオアネによる2本目を演出した走りは、SO山沢拓也のものだ。

 本人は言う。

「空いているところを探し、攻める。それができた時もあれば…という感じです」

 ファーストトライを挙げたWTB福岡堅樹は「外ではそういうチャンスがある時はある」と、自陣の左タッチライン際で何度も敵のボールを奪う。

 続く後半9分のペナルティゴールで17−3と安全水域へ移るところ、トヨタ自動車の新しい主将と指揮官が流れを変えにきた。

 13分、FL姫野和樹がハーフ線付近左の接点で球に腕を差し込む。相手のノット・リリース・ザ・ボール(球を手放さない反則)を誘う。敵陣22メートル線付近へ進む。

 15分、球を動かした先のゴールポストほぼ正面で、自軍ボールスクラムを得る。ここでジェイク・ホワイト監督は、最前列の右PRを浅堀航平から伊尾木洋斗に代える。

 それまで苦しんでいたスクラムを、じりじりと押し込む。右、左と球を振る。最後はWTBヘンリー ジェイミーが横殴りのタックルを受けながら、倒れずに走り切る。

 17−8。先頭中央のHO彦坂圭克は、スクラムの変化をこう語る。

「前半は真っすぐ組みたくてもうまくできなかった。後半は伊尾木がどっしり構えてくれました」

 緊迫する陣地獲得合戦のさなかに新たな刀を得たトヨタ自動車は、勢いを増す。25分にはカウンターアタックを契機に17−11と迫る。

 結局、パナソニックが逃げ切った。FLデービッド・ポーコック ゲーム主将のジャッカル(接点で相手の球に絡む動き)によってだ。

 特に、終わりの迫った29分頃の1本は圧巻だった。

 FLポーコックは中盤でタックルし、起立してすぐにその場のボールへ絡む。トヨタ自動車、ノット・リリース・ザ・ボール。

 敗軍の将は「社長にお願いしてポーコックを獲れば、逆に我々が相手の反則を取れる部分も…」。ジョーク交じりに悔しさを語るほかない。
(文:向 風見也)

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