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流経大、多国籍ラインが明大斬る! 快勝劇に新人タナカは「サポートする」

今季注目の流経大ルーキー、タナカブランドン・ムゼケニエジ(撮影:MASASHI TOGO)


 明大と流経大は、5月1日、関東大学春季大会Aグループの開幕を迎えた。昨季は関東大学リーグ戦で2位だった流経大が、関東大学対抗戦Aで帝京大と同率1位だった明大のホーム、東京・明大八幡山グラウンドに乗り込み、66−33と圧勝。昨季の大学選手権セカンドステージ(2015年12月20日/神奈川・相模原ギオンスタジアム)で14−52と屈した相手に雪辱を果たした。

 24−21と3点リードで迎えた後半3、4、9分と立て続けに得点し、勝負を決めた。

 特にそのうち3本目は圧巻。自陣ハーフ線付近中央で4年のSO東郷太朗丸が守備網を突き破ると、後ろから駆け込んだ新人のWTBタナカブランドン・ムゼケニエジが快走。相手を引きつけ、敵陣中盤あたりで右タッチライン際にロングパス。球を受けた2年のWTB桑江淳太郎がインゴールを割り、喝采を呼んだ。

 SO東郷のゴールも決まり、スコアは45−21。大会の登録によっては「ムゼケニエジ・タナカ」と表記されるタナカは、「フォローするだけだった」と述懐。兄で4年のFB桑江健一郎とともに出場したWTB桑江淳太郎は、こう振り返った。

「ブランドンのパス距離は長い。サポートについたらもらえるからと、全力で走りました」

 その爆発力は、打ち合いを演じた前半から目立った。

 5−7とビハインドを背負った13分には、自陣深い位置でのアンストラクチャー(双方が陣形を揃えていない局面)の状態から効率よく展開。手数の少ない攻めでCTBシオネ・テアウパの逆転トライを呼んだ(10−7)。自陣での反則から明大にチャンスを渡す場面もあったが、チャールズ・ロウ ヘッドコーチの指導内容は概ね活かされたか。快勝劇を経て、SO東郷はこうも言った。

「チャールズさんから教えられているのは、チャンスがあったら攻めろということ。自陣では相手にとって守るエリアが(前後左右ともに)広い。こちらには外に強いランナーがいて、安心してボールを渡せる。そちらに相手の注意が行ったら、自分が…(仕掛ける)。自分の判断でやらせてもらえるので、やりやすい。いろんなボールのもらい方をして、的を絞らせないようにしています」

 この日の流経大は、大型選手をBKラインに並べた。4年のCTB落合知之(身長183センチ、体重100キロ)が防御網に杭を打ち、その外側には3年でCTBテアウパ(身長186センチ、体重102キロ)、WTBタナカ(身長181センチ、体重93キロ)が屹立。なかでもCTBテアウパは3回もゴールラインを駆け抜けた。

 7歳でニュージーランドへ渡ったジンバブエ人のWTBタナカは、柔らかなステップでのカウンターで魅せる。試合終盤には足を痛めて自らベンチに退いてから、交代選手がいなかったために「立っているだけでいい」と諭されグラウンドに復帰。相手をタックルで押し出し、ノーサイドの瞬間を迎えた。

「いいチームだから、サポートする。チームとつながることを考えます。まずはチームの文化に慣れて、チャンピオンに…」

 覚えたての日本語を交えつつ、ただただ仲間を称賛する。苗字はこの国でも聞き慣れた音の響きをしているが、本人いわく「ジンバブエにあるファミリーネーム」とのことだ。

 シーズン初の公式戦を終え、内山達二監督は「まだまだミスもペナルティも多い。春の初戦だから、いいところも悪いところも出して行って…」と控えめに語る。もっともアンストラクチャーからの攻めには「そこは練習しているところ。チャールズのもと、スキルが上がっている。ターンオーバー(攻守逆転)からの意識を上げていくなかで、そのスキルが形になった」と続ける。

 15日にある次戦では、大学選手権7連覇中(昨季対抗戦A・1位)の帝京大と激突(東京・帝京大百草グラウンド)。今後、さまざまなBKラインの構成を試して選手層を広げたいようで、この日も後半途中からWTBタナカをCTBに入れた。褐色のランナーを現地でスカウトした理由を聞かれ、こう笑った。

「リアクション、ワークレート、タックル…。あとは、明るいところ。性格もよくて勉強熱心だったので、違う世界観のもと成長して、日本を代表する選手になってくれたらなと。…こっちへ来るまで、あいつがタナカという名前だって知らなかったんだ。えー、お前、タナカなの? って」

 一方、ハーフタイム明けから34分まで無得点と苦しんだ明大では、4年のCTB尾又寛汰が「接点でファイトされて後手、後手に回った部分があって、守り疲れてしまって、最後、切れてしまった。個人のタックルの意識の低さが、露呈したかなと」と反省。WTBタナカらに長い距離を走られたことは「(守備網の)連携を取る、ワンラインで上がる…。そういう練習をしていたけど、コミュニケーションが取れなくて、スコアされた」と振り返る。

 HO中村駿太前主将(サントリー)ら経験豊富な上級生が抜けた自軍の背景、大学選手権のリベンジに燃える相手の思い。それらを総合し、精神的な問題にも触れた。

「全員が15分の1の責任を果たしていれば、こんな結果にはならなかった。紫紺(ジャージィの愛称)を着ている以上はそれをしなければならないのですけど、その意識を下級生に浸透させられなかったのは4年の責任です。流経大さんは僕らに負けた悔しい思いをぶつけてきた。今日の試合に臨む姿勢は、流経大さんの方が強かった。これからはどこが相手でも、気持ちで後手に回らないようにしたいです」

 敗れた丹羽政彦監督は、「地底から這い上がります」と努めて明るく振る舞っていた。8日には八幡山で中大(昨季リーグ戦・3位)に挑む。
(文:向 風見也)

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