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大将の季節。 ひかりやクリーニング 代表・寺師典重

高校生ラグビーマンのために即日で洗濯&仕上げをする
ひかりやクリーニングの大将・寺師典重さん



 じき花園や。全国大会に参加できる高校生は、うきうきワイキキビーチやね。

 大将も本番でっせ。
 寺師典重(てらし・のりしげ)はん。「ひかりやクリーニング」の二代目や。
 大会中、希望した出場チームの洗濯物を低価格で引き受ける。
 1日おきの大会に合わせて即日仕上げ&お届けはもちろん、残念ながら負けてしまったチームには地方発送もたまわりまっせえ。

 値段はジャージー、パンツ、ストッキングの3点セットでわずか3ケタ。メンバー25人分は大将の携帯に直接電話して聞いたって。まあビビるで。消費税8パーセントも据え置き。うーん、涙ぐましい企業努力。
 大会中の定位置はメインスタンド西側の関係者入り口。常に臨戦態勢やな。

 ああ、「大将」ちゅうのは、京阪神で飲み食い含め商店で一番偉い人につける尊称やね。

 大将は還暦と古希の中間や。黒いお顔にまん丸おめめ、白い短髪。職人って感じやで。店はラグビー場と同じ東大阪市内にある。嫁の昌子はんと二人三脚でやってるでー。

 開業は1958(昭和33)年。初代は大将のおやっさんの重春さんや。今年で60年。「たいしたもんだよ、屋根屋のふんどし」ってフーテンの寅さんになってしもたわ。

 大将の名刺には「関西ラグビーフットボール協会推薦店」と入ったある。社会人では地元の近鉄やNTTドコモ、トップリーグは関東のクボタやリコーも得意先や。遠征で来た時は軽のバンに乗って回収に行くでー。

 ところで、高校チームで一番おつきあいが長いのはどこでっか?
「アキコーちゃうかなあ。たぶん花園に移ってからずっとやと思うよ」
 秋田工は1925(大正14)年創部。全国大会優勝は歴代最多の15回を誇る。
 全国大会が兵庫・西宮球技場から花園に移ったのは1963年の42回大会から。ゆえにこの名門とのお商売は半世紀以上続いてる。

 今年、秋田工は出られへんかった。県予選決勝で秋田中央に14−24で負けてもた。上得意さんに会えず、残念や。
 それでも、大将は出場51校中、Aシードの東福岡なんかを含めて30校のクリーニング経験がある。過半数やで。

 大将の仕事は丁寧や。
 花園の3つのグラウンドでついた芝の緑色や土の茶色を丁寧に洗い落とし、乾かす。ジャージーには一家言持ってるで。
「昔は襟をピンと立たすために糊づけすんのが難しかってん。立ってんのが格好よかった。あれがないとあかん。ゴルフする時でも襟つきを着ていかなあかんやろ。あれが正式なんや。決めてることは、やり通さんとな。ええやん、では何でもありになってしまう」
 綿100パーセント時代の昔を振り返りながら、知識なしに襟なしジャージーを作るチームに自分の思いを口にするで。

 大会中は徹夜続きやが、大将は苦にせん。
「まあ、高校時代には寝んと生活してたから、そのへんは大丈夫やねん」
 にゃっと不敵な笑みを浮かべる。

 大将は布施工(現布施工科)を1年で中退して、都島工に通った。
「まあ、色々あってな」
 やんちゃをしてた噂がある。しかし、そんな話はおくびにも出さん。武勇伝はある意味、恥部のさらけ出し、ちゅうことやから。
 布施工でラグビーはやめて、高校生ながら、おやっさんが亡くなった店を継ぎ、なおかつバイトにいそしんだ。

 えっ、バイト?
「そう、車を買うお金が欲しかった。夕方4時くらいまで学校やん。家帰って、11時くらいまで店を手伝う。ほんで北新地のはずれでバーテンダーをしとってん」
 どんな高校生やねん。まあしかし、念願かなって発売ほやほやのホンダ・シビック=50万円也を手に入れた。

「朝3時くらいに家に帰って、少し寝て学校に行く。授業中はほとんど寝とったなあ」
 それやったらエンドレスの仕事も大丈夫やね。ただ、その影響で高校出んのに都合5年かかった。20歳の高3って牢名主かっ。
「おかんに高校だけは出とかんと、って言われたからなあ」
 母親思いの優しい典重少年でおました。

 以来、50年以上、家業を守ってきた。
 大将には商売の三箇条がある。
「媚びない、キレない、意地を張らない」

 どっから引っ張ってきましてん?
「平尾さんが雑誌のインタビューで言ってはってん。ええなあと思ったんよ」
 平尾誠二はん、「ミスター・ラグビー」を今も愛する人はここにもいてる。

 媚びないとは?
「相手のご機嫌を取ってまで仕事はもらわんでもええやろ」
 キレないとは?
「怒るんやったら、冷静にいかんと相手に伝わらへんと思うねん」
 この辺は高校5年の経験が漂うで。

 意地を張らないとは?
「若い人から意見を言われたら、ワシはワシのやり方があるんじゃ、やなくて、そうか、って受け入れるのも大事なんちゃうのん」

 大将のこれまでの考え方や仕事が正しかったことは店の存続、そして3人の子供を育て上げたことが証明している。末っ子の長男・悠斗はんは日体大を出て、今は近大附の体育教員&サッカー部コーチや。
「信念を曲げんへんでやってたら、食べていけるんとちゃうかなあ。神さんは見ててくれているはずやから」

 大将はこの冬もリクエストのあった高校のために一生懸命に洗濯するで。
「みんなが、気持ちよくグラウンドに立ってくれたら、それでええねん」
 余裕があれば、連戦が続くチームのジャージーを見てほしいなあ。1点の汚れもない戦闘服は大将の思いがこもってるんやで。

◆ひかりやクリーニング◆
■住所:東大阪市森河内東1−30−3
■電話&FAX:06−6781−7214
■大将の携帯:090−4302−1791(優しく対応してくれはるから、気兼ねなく電話して)






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