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目指すは古豪復活。兵庫・神戸村野工業高校

神戸村野工高校の首脳陣。前列左から岡本安規伸コーチ、平位篤志監督、
山下浩司部長。後列左から尾崎義輝主将、エースの太田寿一郎



「ムラコー」の愛称を持つ神戸村野工業高校は兵庫県で長い楕円球史を有する。
 初めての全国出場は23回大会。西暦では1941、和暦では昭和16である。アメリカなどとの太平洋戦争が勃発した年だった。

 今年は昔の強さに、わずかながらも近づく雰囲気が漂っている。
 チームで唯一、国体の県選抜に選ばれたセンターの太田寿一郎(としいちろう)、主将で177センチ、97キロのサイズを持つプロップの尾崎義輝を中心に結束する。

 監督は今年34歳になる平位篤志だ。
「太田をはじめタレントはいます。ようやく人数が40人近くになり、ケガ人が出てもフルメンバーでアタックディフェンスができるようにもなりました」
 現在の部員数は39人(3年=16、2年=9、1年=14)。実戦勘はつく。着任して9年目。その教えが浸透しつつある。

 村野工の学校創立は1921年(大正10)。あと3年で100周年を迎える男子校は、県内唯一の私立工業校でもある。
 ラグビー部の創部は、『全国大会兵庫県予選パンフレット』には1948年とある。学制改革で旧制中学が高校に変わった年に設定されているが、全国大会初出場年を参考にしても、その活動はそれより以前になる。
 県内でもっとも古い神戸一中(創部1926年、現神戸)、続く神戸二中(同1929年、現兵庫)にも大きくは劣らない。

 これまでの全国大会出場回数は9。この数字は報徳学園の43、兵庫の13に次ぎ県内3位だ。神戸と並ぶ。戦績は2回戦進出が最高。最後に花園の芝を踏んだのは47年前だった。1971年の50回大会である。

 70年以上の部史を有するチームは、故人にはなったが2人の日本代表を生んだ。
 スタンドオフだった新井茂裕は早稲田大から京都市役所に入った。キャップ6。伝説的指導者である大西鐡之祐が臨時コーチに招くほど、パスなどの技術を持っていた。息子の達也は整形外科医になり、現在、大阪府ラグビー協会の医務委員長をつとめる。

 尾崎真義はセンターとしてキャップ5を得た。法政大からトヨタ自工(現トヨタ自動車)に進む。1968年、ニュージーランド代表の下のオールブラックスジュニアを23−19で破り、世界を驚かせた時の主将だった。
 唯一の現役トップリーガーは東芝の松岡久善だ。摂南大を経た4年目ウイングである。

 現在の県内最強は報徳学園だ。二番手は関西学院、神戸市立科学技術、尼崎市立尼崎。村野工は三番手グループにつける。
 今年の新人戦(近畿大会予選)は16強で科学技術に7−46、春季大会(県民大会)は8強で報徳学園に5−76でそれぞれ敗れた。15人制ではステージを1つ上げる。
 その間、4月にあった7人制全国大会の県予選では4強に進出。報徳学園には0−41で歯が立たなかったものの、チームとしての良化を周囲に知らしめている。
 その流れの中で、この10月、尾崎の代にとっては最後の全国大会予選を迎える。

 日々の練習は放課後2〜3時間を費やす。ただ、長田区にある学校グラウンドはラグビー用の半分しかないため、ウィークデーは3回、稲美町にある第2グラウンドに向かう。スクールバスで片道40分かかる。
「バスの中では、模擬面接をしたり、あいさつの仕方などを教えます。やる人間がしっかりしないといけない、と思うからです」
 社会科教諭でもある平位は、車内での時間を無駄にせず、人間教育を施す。

 平位は関東学院大の新入生と最上級生の時に2回、日本一を体感している。
 フランカーとして県立伊丹から入学。4年時の第43回大学選手権(2006年度)の決勝では、早稲田大を33−26で破った。同期は田中貴士。トップリーグのHondaのプロップである。
 関東学院大の恩師・春口廣と村野工前監督の金川好延とが、日本体育大の同期だった関係で、故郷への赴任が決まる。

 今年はコーチとして岡本安規伸が加わった。報徳学園から東海大に進んだフッカーは、常勤講師として社会科を教えている。
「彼の存在は大きいですね。自分が校務で練習を見られない時でも任せられますから」
 さらに、部長の山下浩司がいる。バレーボール出身で、機械科教諭である
「山下先生はラグビーとは違う目線で物事を見てくれます。そういうのは大事です」
 形のよいトライアングルができている。

 今年のチームのエースは太田だ。小4から神戸少年ラグビークラブで競技を始めた。
「パワーは外国人並みです。どんな相手に対しても前に出られる強さがあります」
 平位は評する。体格は178センチ、95キロ。2年時よりも10キロ増量する。
「ちょっとした器具があるので、家でもウエイトトレーニングをしています」
 太田は笑う。福井国体では、報徳学園が中心のチームで全3試合に先発する。準決勝では東福岡中心の福岡選抜に12−28で敗れたが、3位入りに貢献した。
「高いレベルでラグビーができて、いい経験になりました」

 39人の部員をまとめる尾崎は力を込める。
「チームとしてまとまりが出てきました。これまでの伝統をしっかりと受け継ぎ、責任感を持って試合に臨みたいと思っています」
 進路は、太田は日本大、尾崎はいすゞ自動車に内定している。

 10月14日、村野工は全国予選初戦となる合同1(県立尼崎と北摂三田)を69−0で降し、3回戦に進んだ。次戦の相手は神戸弘陵。監督は村野工OBの松原鉄司である。ここを突破すれば、8強で春1位の報徳学園と対戦する公算が高い。そうなれば大一番になる。

 そのジャージーは紺とグレーの段柄。1911年創部の同志社大と同じカラーだ。
 平位は歴史に敬意を払う。
「これを着て、全国大会に出た、と聞いています。勝手に色やデザインを変えたりしたら、街を歩けなくなります」
 深まる秋の中、連綿と受け継がれてきた試合着を輝かせたい。
(文:鎮 勝也)






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