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関西復権への大学選手権準決勝 天理大&同志社大

帝京大戦に向け、ランニングトレをする天理大。中央はFLフィリモニ・コロイブニラギ


 大学選手権において、関西勢にはかって「送り出し」という儀式があった。
 2006年12月17日、第43回大会1回戦。大阪体育が作ったアーチの中、京都産業のメンバーが歩む。拍手、声援を至近に受け、赤紺は花園に飛び出す。戦前の予想を覆し、帝京から10−7で勝利を得る。
 関西リーグでのライバルチームの「送り出し」を監督・坂田好弘(現関西ラグビー協会会長)に提案したのは主将だった平瀬健志(現NTTドコモ)。勝利監督となった大西健は、メディアに記者会見開始を遅らせるお願いをして、自らも大阪体育を送り出す。
 2校は4強に進出する。京都産業は早稲田に12−55、大阪体育は関東学院に3−34で敗れる。それでも、関西2校が準決勝に進んだのは史上5度目の出来事だった。

 そして、2016年。天理(関西リーグ1位)と同志社(同2位)が、以来10年ぶりとなる関西勢2校による4強入りを果たした。その中で、「送り出し」が起こる。
 12月17日、同志社は早稲田を47−31で破った。ストレッチを終えロッカーに戻る途中、グラウンド入場する天理に出くわす。10年前と同じような大きな拍手と歓声が花園の薄暗い通路にこだます。
 監督の小松節夫は振り返る。
「うれしかったなあ。ジャージーを着たまま、同志社のみんなが送り出してくれてね。思わず『ありがとう』って言ったよ。なんかで読んだことがあったんやけど、『ああ、これが送り出しなんやわ』と思ったね」
 天理は慶應を29−24で振り切る。
 53回の選手権の歴史の中で、6回目となる関西勢2校による元日越えを完成させた。

 母校・同志社との4強入りに関して、小松は言う。
「関西のラグビーのレベルが上がってきた、ということやと思います。ウチと同志社が残って、京産も明治に勝った。強くなったことが実証されたんじゃあないかなあ」
 大学時代、小松の2学年後輩だった山神孝志は笑顔を浮かべた。
「東高西低だった大学ラグビーに一石を投じられたと思うよ」
 今年度大会から、関西リーグの出場枠は3になった。前年度の決勝進出2チームの所属リーグに与えられる出場枠は関東対抗戦とリーグ戦が取った。結果、これまでの5から2枠を減らすことになる。
 関西大学リーグ委員会は今シーズンから春季大会を導入するなど、強化につとめてきた。その努力もあるが、天理と同志社は独自の強化策が奏功する。

 小松は主にコーチングに重点を置き、BKのフロント3がほぼ平行に並び、エキストラマンを含め、どこにボールが渡るかわからない「フラットライン」に磨きをかけた。今シーズンは泣き所だったスクラム、そしてモールの強化にも成功する。セットプレーの安定はボールキープを高める。
 山神は現行の入試制度をフル活用。九州などの遠隔地にも足を運び、有望な高校生に入学を訴え、受験指導もする。コーチ陣にも大西将太郎(豊田自動織機)、仙波智裕(東芝)、太田春樹(近鉄)など、直近にトップリーグを経験したOBらをコーチとして入閣させ、最新ラグビーの吸収を図った。

「Something Different」
 同志社の中興の祖である岡仁詩がよく口にしていた言葉である。
 和訳すれば「どこか違う」。
 岡は同志社ラグビーを「形がないのが形」と評していた。「FWの明治、BKの早稲田」というライバルとの対比の中で、自チームの特徴を表現していた。
 小松と山神が選手として籍を置いた時代は、同志社がもっとも華やかだった。小松は大学1年時に3連覇(21回大会、1984年度)を経験。小松が4年、山神の2年時は決勝で早稲田に10−19で敗退した(24回大会、1987年度)。それが最後だった。
 次に決勝に勝ち上がったのは天理(48回大会、2011年度)。帝京に12−15で屈した。

 岡の薫陶を受けた者たちは、その「異質」なチーム作りを携え、関西の代表として、5年ぶりの決勝進出を目指す。
 天理は8連覇をかけた帝京、同志社は初優勝を目指す東海と対戦する。
 小松は分析する。
「帝京と東海、この2チームは抜けている。西や東ではなく、早稲田や慶應や明治なんかの中から、ウチと同志社が抜けた感じ。一般的に言えば『ビッグ2』よね」
 山神も同じようなことを口にした。
 その上で小松は大学王者を評する。
「チームとしてスキがない。チャレンジャーとしてやるしかないよね」
 山神は、自らがリーグ戦で33−31と2点差辛勝した京都産業に、2週間前に71−12で圧勝した東海を見据える。
「シンプルに強い。フィジカル自慢の相手の圧力にどこまで耐えていけるか」
 決戦の日は1月2日。舞台は東京・秩父宮ラグビー場。ともに勝てば、53回にして史上初の関西勢による決勝が実現する。
 歴史の創造者たりえるか。
(文:鎮 勝也)

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東海大戦に向け、スクラム練習をする同志社大。
中央の黒ダウンコートは太田春樹コーチ、ボールを入れるのはSH大越元気
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