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関西協会の新しい試み 「レフリング検証申請制度」

「レフリング検証申請制度」って知っていますか?
 レフリーの判定に対して、チームがその正誤を協会に問い合わせできるものです。
 関西ラグビー協会が2013年シーズンから独自で導入し、今年2年目を迎えました。今月5日に開幕した関西大学Aとトップリーグの下部組織であるトップウエストAの2つのリーグで適用され、A2以下のレフリーを統括する関西協会レフリー・ソサイエティーがその疑問に答えます。

 中心的役割を担う、日本に6人しかいない最高のA級レフリー、原田隆司さんが主旨を説明します。
「疑問に思っている判定に対して、チーム、それともレフリーのどちらが間違っているのかをはっきりさせるためのものです。そこを明確にさせないとシーズンを通してチームはプレーができなくなる。関西が強くなるための一つの試みですね」
 原田さんは1967年生まれの47歳。大阪府立北野高校、大阪教育大学を経て、2007年に日本協会主催の国際試合の笛を吹けるA級に昇格。その後8年間降格することなくトップレベルを維持しています。小学校教諭から2009年には大阪で「原田闘球審判事務所」(現在は原田闘球審判合同会社)を構え、プロフェッショナル・レフリーに転向しました。

 導入を唱えたのは関西協会会長の坂田好弘さんでした。「空飛ぶWTB」と呼ばれ日本代表キャップ16を持つ坂田さんは大阪体育大学の監督を36年つとめ、2013年度から現職になりました。就任後、すぐに動きます。
「そりゃあ、オレが監督をやっている時から(そういう制度がないことを)ずっと不満に思ってた。ニュージーランド(NZ)にもないなあ。そもそもはレフリーもチームもともに成長しよう、ということや。原田さんがいてくれたのもよかったね」
 IRBのラグビー殿堂にアジア人で初めて選ばれ、留学したNZとの縁が特に深い坂田さんは世界的な見識を持っています。その感覚が作らせたシステムともいえます。

 仕組みは迅速です。問題が起こった週に即対応。週末の試合の後、チームは火曜日の午後6時までに当該シーンを撮影したDVDと文書を協会に提出します。原田さんがそれを受けとり、木曜の夕刻までに判断を下し、ソサイエティー委員長の田中伸明さんに報告。田中さんの承認を得て、チームに回答がなされる、というものです。
 この結果によって判定は覆りませんが、レフリーの側に間違いがあった場合は以降の笛には修正が加えられます。

 昨シーズン、大学Aリーグからの提出は4件。大体大、京都産業大学から同志社、立命館大学戦におけるラフプレーなどの質疑でした。原田さんは振り返ります。
「4件ともにおおむねレフリーの間違いでした。チームが制度を利用するのはよっぽどのこと。基本的にはレフリーの見落としが多いのです」
 大体大部長の中井俊行さんは言います。
「レフリーから回答がもらえる。その辺りはいいわね。これまでは疑問を言うてるだけで終わりやったからね。レフリーの技術向上にも役立っていると思うよ」
 チームからの評判も上々です。

 先月9月下旬には総合理解を得るため、原田さんが大学Aリーグ8チームのグラウンドを訪れました。特に見解の相違が多いスクラムとモールの説明に時間を割きました。
「スクラムでフロントローがつかみ合う時には必ずスモールギャップを作る。ラインアウトモールに関してはボールを獲って着地した瞬間、相手がついていない場合(いわゆるエア・モール)はモールにはならず、従ってサックも可能、という話を主にしました」
 来春からは大学Aリーグで実際にパフォーマンスをするA2のレフリーたちを連れて大学を回る計画を立てています。
「各チームときっちりしたコネクションを作りたいんですよね。チームとレフリーは一体にならんといけないから。大変やけど面白いですよ」

 最後に原田さんに質問しました。
「あなたのレフリングのモットーは?」
 すぐに答えが返ってきました。
「楽しく、ですかね。みんなが試合を通してハッピーになれることを目指しています」
 5日の花園ラグビー場での開幕戦ではハーフタイムにグラウンドに立って、マイク片手に女子中学生部員とともに観衆に反則を説明していました。

 関西協会の新しい試みがチーム強化や観客動員につながるよう祈りたいですね。
(文:鎮 勝也)


【筆者プロフィール】
鎮 勝也(しずめ・かつや) スポーツライター。1966年生まれ。大阪府吹田市出身。6歳から大阪ラグビースクールでラグビーを始める。大阪府立摂津高校、立命館大学を卒業。在阪スポーツ新聞2社で内勤、外勤記者をつとめ、フリーになる。プロ、アマ野球とラグビーを中心に取材。著書に「花園が燃えた日」(論創社)、「伝説の剛速球投手 君は山口高志を見たか」(講談社、14年10月発売予定)がある。

(写真:A級レフリーの原田隆司さん/撮影:早浪章弘)
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