コラム 2022.11.04

【ラグリパWest】末っ子、やるぞ。森山飛翔 [京都成章高校/プロップ] 

[ 鎮 勝也 ]
【ラグリパWest】末っ子、やるぞ。森山飛翔 [京都成章高校/プロップ] 
ウエートトレの補助につく森山飛翔。京都成章高校を共同主将として引っ張る。ポジションはプロップ中心。湯浅泰正監督の期待は大きい。森山は姉や兄を含め6人兄弟の末弟である



 森山飛翔(つばさ)には姉が3人、兄が2人いる。今どき珍しい6人の子だくさん家庭に育っている。森山は一番下である。

 この末っ子は京都成章のプロップ。共同主将をつとめ、高校日本代表候補でもある。森山家はラグビーに長けた家系である。

「兄2人からアドバイスを聞けることがいいです。動画を使ったり、直接言ってもらえたりします。休みの日にはごはんに連れて行ってもらえます。焼き肉が多いです」

 森山はまん丸い顔を崩す。長兄・皓太(こうた)、次兄・迅都(はやと)はこの競技の先輩。第二子と第五子である。

 長兄は11歳上だ。現在、中国電力の社員としてそのチーム、レッドレグリオンズでフランカーをつとめる。次兄は。摂南の3年生。同じポジションでレギュラーを張る。所属はリーグワンのディビジョン3と関西大学Aリーグ。ともに高いレベルでプレーをする。

 3兄弟の特徴は体の強さ。長兄は仰向けに倒すタックルで、摂南時代に関西学生代表に選ばれた。森山も昨年度の冬の全国大会、通称「花園」で、体幹の強さで相手を吹っ飛ばす。チームは8強敗退。東福岡に25−31と届かずも、180センチ、107キロの体は輝きを放った。101回大会だった。

「これまでは自分より1、2個上の人たちが相手でしたが、今年は同世代になりました。その分マークがきつくなります」

 熱中するのはウエートトレーニングだ。
「今年からコーチが変わってきつくなりました。回数も重さもやります」
 天理大などのS&Cコーチをつとめる山下大輔や中村龍に見てもらえるようになった。最大のキロ数はベンチプレスが138、スクワットは220。数値増は18と40キロだ。

 その森山を監督の湯浅泰正は頼もしそうに見つめる。
「今の高3という時点だけで見れば、すべてにおいて森山の方が上です」
 比較対象はOBの坂手淳史。主将として埼玉パナソニックワイルドナイツ、そして日本代表をけん引する。

 坂手はフッカーとして、10月29日のニュージーランド代表戦に先発した。チームを31−38と歴代最少得失点の7に導いた。キャップは31に積み上げる。観衆6万5188は国立競技場改修後最多となった。

 その光景は湯浅にとっては自然だ。
「坂手には高校時代から強烈なキャプテンシーがありました」
 人を率いる部分においては、森山は11歳上の先輩に及ばない。

 スペシャルな可能性を秘めた森山が競技を始めたのは小4。京都にある「おおぞら少年少女ラグビーチーム」だった。中学は藤森(ふじのもり)。ラグビーは続ける。

 高校は京都成章。長兄の東山、次兄の京都工学院とは違った選択になった。
「成章は勝っています。花園に出たい、という思いがありました」
 京都成章は94回大会からここまで8年連続の出場を続けている。

 森山が選んだ京都成章の花園出場は14回。この数字は学制改革で新制高校となった1948年(昭和23)から見れば、京都府内で2位になる。花園と京都工学院(旧・伏見工)の20回に次ぐ。最高位は準優勝。100回大会では桐蔭学園に15−32。1年生だった森山は右プロップとして先発している。

 創部は学校創立と同じ1986年(昭和61)。湯浅は保健・体育教員として翌年、赴任。亀岡高、琉球大ではラグビーを経験したが、前任者がいたため、バスケットボール部の顧問を2年やる。1989年にラグビー部監督についた。指導は34年目。湯浅の学年は来年還暦を迎える。上が青色、下が黄色のジャージーを全国区の強豪にひとりで押し上げた。

 学校は京都市の西京区にある。全日制と通信制の普通科を持つ共学校。校内グラウンドは人工芝化されているが、フルサイズは取れず、甲子園準優勝の実績のある野球部と使い分けている。学校は峠道の途中にあり、生徒は電動機付き自転車や路線バスで登校する。決してよいとは言えない条件の中での強豪化は湯浅の指導力の高さを示している。

 湯浅について3年目。森山は最終学年を迎える。今年はプレーの幅を広げることもあり、ナンバーエイトで試合に出たりもする。
「この位置はスクラムを最前線で組まない分、疲れません。前に出やすいですね」
 他チームにとってこの突破力が随時出てくるのは脅威になる。

 森山とセンターの本橋尭也(たかや)は共同主将に選ばれた。新チームが始動した今年1月からだ。101人の部員を束ねる。春は3月の選抜大会に出場。2回戦で中部大春日丘に13−20で敗れた。23回大会だった。

 その後の府総体、いわゆる春季大会は京都工学院を52−10と大差で降し、京都王者の称号を得る。選抜大会に先立つ近畿大会予選(新人戦)は京都から2校出場のため、京都工学院とはブロックが分かれ、直接対決はなかった。近畿大会では和歌山工に125−0、常翔学園を36−31と連破し、3大会連続10回目の選抜大会出場を決めた。

 京都成章にとっての花園予選は8強戦から始まる。10月29日、長兄の母校である東山を55−0で降した。
「今年の大会はこれまでとは違います。目標は花園優勝です」
 最後の全国大会にかける意気込みは強い。

 父の力(ちかし)は森山が中2の時に病没した。父には草葉の陰から勇躍している自分の姿を見てほしい。家庭内においては、それがこの末っ子に課せられた使命である。


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