国内 2020.02.16

ハーキュリーズが初戴冠。「慶大DNA」で全国クラブ大会を制す

[ 編集部 ]
ハーキュリーズが初戴冠。「慶大DNA」で全国クラブ大会を制す
クラブ日本一の栄誉をつかんだハーキュリーズの青井郁也主将。(撮影/松本かおり)
喜ぶハーキュリーズ。苦しんだ末の逆転勝ちに沸いた。(撮影/松本かおり)
名古屋クラブのハードな防御が試合を引き締めた。(撮影/松本かおり)



 最後はピンチを凌いで勝利を手にした。
 1点リードで迎えた後半40分過ぎ、名古屋クラブの上垣内勇作に自陣深くまでボールを持ち込まれたからだ。
 必死に戻り、守ったハーキュリーズはボールを取り返し、右タッチに蹴り出す。その瞬間、大学時代はタイガー軍団で汗を流した男たちがクラブ日本一の栄誉を手にした。
 17-16のスコアだった。

 2月16日、熊谷ラグビー場でおこなわれた第27回全国クラブ大会の決勝は好ゲームとなった。
 優勝したハーキュリーズは2011年の春、現在キヤノンイーグルスでコーチングコーディネーターを務める林雅人氏が慶大監督を退任したタイミングで音頭をとり、立ち上げたクラブだ。そのときに卒業した4年生らを初期メンバーに、その後、後輩たちが加わった。

 優勝の瞬間に涙を浮かべた林氏は、クラブの代表を務めている。
「日本の社会人ラグビーを考えたとき、トップリーグとその他、というような分け方をされることが多いと思うのですが、オーストラリアの地元クラブのように、純粋にラグビーを楽しめる集団を作りたいな、と思ったのが原点です」
 卒業後はビジネスの世界など、第一線で活躍しているメンバーばかり。練習や試合に人が集まらず、苦労した時期もあった。
 しかし、今季から青井郁也主将が空気を変える。練習量も増やして上昇気流に乗った。

 ファイナルでは苦しんだ。
 前半は名古屋クラブのペース。FL浜中友輔やCTB光部修平らの猛タックルに攻めあぐね、ターンオーバーを許しては攻められた。
 25分にはアンストラクチャーの状態からビッグゲインを許し、トライも許す。好機のセットプレーも乱れ、0-13のスコアでハーフタイムを迎えた。

 しかし、ハーキュリーズは後半に入って息を吹き返した。セットプレーの修正が大きかった。
 5分、ラインアウトからモールで前へ出て、最後はLO西川大樹がインゴールに入る(5-13)。13分にPGで差を広げられるも(5-16)、22分には相手左PRがシンビンでいない間にスクラムで圧力をかける。NO8松村凜太郎が左隅に飛び込んだ。

 31分は右中間のゴール前スクラムでいっきに押し込んだ。
 名古屋クラブがたまらずコラプシング。麻生彰久レフリーはペナルティトライとジャッジし、ハーキュリーズは7点を加点。17-16として残り時間を凌ぎ切った。

 林代表は、社会に出ても慶應ラグビーのDNAを引き継ぐ教え子、後輩たちの姿に目頭を熱くしていた。
「試合を通して、よくタックルをしていたと思います。足に入る。みんな低く入っていた」
 FB青井主将は「年間の最初に掲げた目標を達成できて嬉しい」と話し、10番を背負って先発した2018年度慶大主将の古田京も、「学生時代とは違う舞台も、やっぱり日本一は最高の気分です」と笑顔だった。
 沸き返るロッカールームには、「きょうは飲むぞー」の声が響き渡っていた。


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