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天理大・小松節夫監督が語る、初の日本一までの距離感とは。

2019.08.30

早稲田大との練習試合でディフェンス突破を試みる天理大のNO8アシペリ・モアラ(撮影:福島宏治)

 東高西低と叫ばれる大学ラグビー界にあって、関西大学Aリーグを3連覇中の天理大は前年度の大学選手権で旋風を巻き起こした。

 準決勝ではそれまで9連覇していた帝京大に29-7で快勝し、同校2度目の挑戦となった決勝では明大に17-22と肉薄した。防御の裏をえぐるパス攻撃とロータックル、小さく固まって押すスクラムで光った。

 今季は初の大学日本一が期待される。しかし、小松節夫監督は地に足をつける。

 昨季のレギュラーのうち、タフなHOの島根一磨前主将、低い姿勢の取れるPRの加藤滉紫、攻守でインパクトを示すNO8のファウルア・マキシと、多くのメンバーが抜けている。

 今季の開幕を間近に控えた8月下旬に「関東との差は」と聞かれ、指揮官はこう明かした。

「昨季の明大戦の終わった直後であれば、『もう差はない。あとはちょっとしたメンタルと経験だけ』という感じでしたが、今年の夏合宿が終わった地点ではだいぶ差があると感じました。それがわかっただけでも、よかったですね」

 8月中旬は長野・菅平で合宿。15日に早大、18日には慶大と、関東の名門と練習試合を組んだ。慶大戦は52-12で勝ったが、早大戦は14-33で落とした。

「夏合宿で『だいたい、関東はこのくらいのレベル』『セットプレー(スクラムなど)、ブレイクダウン(接点)でもっと戦えないと勝てない』が(改めて)わかった」

 特に早大戦では、本来なら長所のはずのスクラムで苦しんだ。

 前半3分頃にはマイボールスクラムを8人一体で押し込みスコアも、前半終了間際には自陣ゴール前のスクラムでペナルティトライを許したのだ。相手がメンバーを代えてきた後半は劣勢になることも多く、試合後の天理大フロントロー勢は四苦八苦したと吐露した。指揮官はうなずく。

「あれはいい経験でしたね。何があったんだろうと選手同士で話したところ、バラバラにさせられたという反省があったようです。いまは『もう一度、固まってやろう』と練習しています」
 
 大学選手権が本格化する12月までに、関東勢を圧倒できる力をつけたい。そこで考えたのが、タイムラグの活用方法。ワールドカップ日本大会の期間中、大学ラグビー界はシーズンを停止させる。天理大はその中断期間、明大、豊田自動織機とトレーニングマッチをする予定だ。指揮官の目標設定は高い。

「関東では強い者同士がガツガツやるなか、互いに吸収し合っている。試合をするたびに進化します。うちはそういったものを関西に持って帰って関西同士でレベルを上げないと、大学選手権に出た時に(関東勢との)差を感じかねない」

 いくつかの問答に応じるうち、こんな皮膚感覚も伝え残した。

「絶対に勝てないとは思いませんが、絶対に勝てるかとなった時にまだ自信はない。どっちが勝つかわからない試合をどう勝つかが鍵だと思っています」

 もちろん、関西大学Aリーグでも一戦必勝を誓う。8月31日、大阪・鶴見緑地球技場で大阪体育大との初戦をおこなう。