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レメキ ロマノ ラヴァは、イタリア代表戦の得点を予言していた?

レメキ ロマノ ラヴァ。9日のイタリア戦、後半にはリードを広げるトライを挙げた
(撮影:Hiroaki.UENO)


 ラグビー日本代表が大分銀行ドームでイタリア代表を34−17と下した6月9日、勝ったリーチ マイケル主将の言葉が注目された。

「試合前に勝っていたと思わせた時があります。それは、最高の準備ができていたからです」

 どうやら当日朝の食堂で、リザーブスタートの流大と松田力也が投入時の試合運びについて話していたようだ。内容は追う展開だった場合の陣地の取り方など詳細に及んだ。

 リーチは2015年のワールドカップ・イングランド大会でも主将として臨み、相手の特徴や担当レフリーへの分析などにも手を付け歴史的3勝を挙げた。主将として準備の大切さを再認識していた。だから今回は、「(試合前の)選手たちがさまざまなシチュエーションを想定したうえで考えている」さまを見て手応えをつかんだのだ。

 準備の充実ぶりは、チーム始動当初から見られた。例えばWTBとして先発したレメキ ロマノ ラヴァは、当日のプレーにつながる発言を随分前に残していた。

「今週のキャンプ? きつかった。ただ、これくらいタフな練習をしないと、たぶん、イタリア代表やジョージア代表には勝てない」

 話をしたのは、6月1日の宮崎はシーガイアでのことだ。5月27日の集合から始まった宮崎合宿を打ち上げ、2014年に帰化したレメキは弾む日本語で充実ぶりを明かしていた。

 9日、16日にイタリア代表、23日にジョージア代表とぶつかるチームは、1勝2敗に終わった前年6月のツアー時より約1週間早く集合。宮崎では疲れた状態で戦術を遂行できるかを問うべく、持久力トレーニングやウェイトトレーニングと実戦練習を交互にノンストップでおこなってきた。

 レメキは今回のツアーへの展望をこう語っていた。

「イタリア代表も、ジョージア代表も、ほぼFWベースのヨーロッパのラグビーをすると思う。セットピースが強い。うちのFWもすごく頑張っているけど、BKが、いっぱい走らないと」

 確かに両軍とも、FWが組み合うスクラムや空中戦のラインアウトなどを長所とする。それだけにレメキは戦前、チームで共有してきたであろう試合運びについて「セットピースは、少なくしたい」と発していた。

 そして、落球後に組むスクラムやタッチライン際でのラインアウトを減らすための具体策も明かしていたのだ。

「(相手が)ノックオンしたらすぐにセービング(ボールを確保して攻める)。相手が外に蹴っても、すぐにボールを入れる…。BKがしたいことをしたら、FWは楽になる。相手はフィジカルが強いけど、プレータイムを長くするとすぐばてるから。タフとスマートのバランスを取れば、たぶん、勝てる」

 当日の前半18分。イタリア代表のキックが自陣10メートルエリア左タッチラインの外へ飛ぶ。落下地点にはFBの松島幸太朗が待ち構えていて、難なく捕球する。

 ここから松島は、ラインアウトでプレーを再開させるのではなくフィールド内に立つNO8のアマナキ・レレイ・マフィにパスを放った。そう。レメキの「相手が外に蹴っても、すぐにボールを入れる」という言葉通り、クイックスローと呼ばれるプレーを選択したのだ。

 マフィは相手タックラーを次々と抜き去る。日本代表はここから2つのフェーズで右側まで展開。ここから再度、左側に折り返すと、間もなくイタリア代表の防御は乱れた。

 左中間では、HOの堀江翔太が相手を引き付けながら角度をつけたパスを放つ。FLのリーチ マイケル、WTBの福岡堅樹は、がら空きになった左端のスペースで大きな突破を決めた。最後はサポートについたマフィがとどめを刺すなどし、日本代表は7−7の同点に追いついたのだった。

 大型選手の揃う相手を走り合いで制そうとした作戦は、最後の最後まで貫かれた。キャンプ中のレメキは、グラウンド外での雰囲気についてもこう話していたものだ。

「チームカルチャー、結構いいよ。練習が終わったらファンへのあいさつ、サインを。いま、ラファエレ(ティモシー)と同じ部屋だから、ご飯は違う人と食べる。で、携帯(電話の使用)も禁止。その方が、いいと思う。そうして、コミュニケーションが取れる。(サンウルブズよりも)外国人も少なくて、日本語もしゃべれる(人が多い)。だから、もっと(関係が)タイトになる」

 もちろん、現状では3戦あるうちの1戦を消化したのみ。2019年のワールドカップ日本大会ではより強力なチームと対戦することを考えれば、さらなる進化が求められるだろう。もっともレメキは、ただ前向きに未来を見据える。自らの強みとチーム戦術との親和性も、その気持ちを後押ししているのだろうか。

 日本代表では、前に出て相手を止める防御方法を唱える。代表と連携を取るサンウルブズも似た発想のもと守備陣形を張るが、担当コーチが違うとあってシステムの詳細に違いがある。

 ジョン・プラムツリー氏が唱える日本代表の防御システム上、WTBのチェックすべき項目はサンウルブズでのそれ以上に絞られるようだ。簡潔な強靭さと思い切りの良さを誇るレメキにとっては、日本代表の守り方は「ボールを外まで運ばせない。回されたら早めにカバーする…。簡単!」とのことだ。

 プラムツリー式を実戦で起動するのは昨秋以来とあって、大分でも何度か大外を破られはした。ただレメキとしては、迷いなく飛び出せたとの実感が残っていよう。宮崎合宿中にはこうも語っていた。

「このディフェンスでは、内側の選手も外側の選手も自信があるから、前に出られる」

 万全な準備が勝利を手繰り寄せれば、その成功体験を根拠に自信を増幅させられる。好循環を断ちたくない。
(文:向 風見也)

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