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サンウルブズ国内待機組の稲垣啓太、序盤戦のタックルスキルを解析する。


3月12日からの第8回NDSキャンプでトレーニングに励む稲垣啓太(撮影:松本かおり)

 ラグビー日本代表のジェイミー・ジョセフ ヘッドコーチ発案の強化機関、ナショナル・デベロップメント・スコッド(NDS)キャンプが起動している。

 3月5〜8日、12〜15日に都内で2017年度の第7回合宿と第8回合宿を開き、日本代表の候補選手、海外遠征中のサンウルブズの国内残留組が参加。国際リーグのスーパーラグビーへ日本から参戦して3シーズン目となるサンウルブズは、今季からジョセフを指揮官に招いて3月5日からは南アフリカ遠征に出かけている。このツアーメンバーに加わらなかった選手は、NDSキャンプをリハビリや再調整の場としているのだ。

 そのひとりに、稲垣啓太がいる。「休むために残ったわけではないですし、足りない部分、やることはいっぱいです」と話す。

 日本代表として2015年のワールドカップイングランド大会などにも出場した27歳の稲垣は、サンウルブズにも発足初年度から続けて参加。今季も初戦にあたる第2節からのホーム2連戦(いずれも東京・秩父宮ラグビー場)で左PRとして出場したが、事前の話し合いから遠征への不参加を決めたという。国内リーグやテストマッチ(日本代表のゲーム)での出番も多い稲垣とあって、南アフリカでおこなわれる2試合はブレイクを命じられたのだろう。

 当の本人は、このNDSキャンプを活用して更なるレベルアップを図る。そう、「休むために残ったわけではない」。サンウルブズや日本代表と同種の戦術を用いた実戦練習、さらには持久力トレーニングやサーキットトレーニングにもコミットする。サンウルブズが開幕前におこなったような基礎的な鍛錬を通し、内なる底力を身に付けたそうだ。

「目標はいろいろありますけど、まずは自分のやることをしっかりやる」

 全体練習の後は、必ずと言っていいほどタックルのスキル練習をおこなう。コーチ陣にハンドダミーを持ってもらったり、他の参加選手と連れ立ったりして、ターゲットとなる相手との間合いの詰め方、身体を当てる瞬間の足の踏み込み、タックル自体の高さなど、細部をチェックする。

「日課みたいなものです。やらないと結局、(身体が)覚えてこない。(タックルを)どういった形でやるかということを、染み込ませる」

 自身が出場したサンウルブズの2試合について感想を求められても、タックルについての言及が多かった。ブランビーズに25−32、レベルズには17−37で敗れたことを踏まえ、「タックルの位置が高かったのかな」。ランナーを最初に止める選手の肩の位置が、理想とされる位置よりもやや高かったというのだ。

 体格差のある相手を止めるには、低い姿勢で相手の腰から下のバランスを崩すのが一般的とされる。今季のサンウルブズには力の強い外国人選手も多いため、稲垣も「皆のフィジカルが強いので(高いタックルでも相手を)止められる」と認めている。しかし1人目のタックラーが相手の上半身を覆うことで、あるデメリットが生じると話した。

「上(胸元)で止めるのがなんで悪いかというと、2人目が絡めなくなるんです」

 世界的には小柄な選手も多いサンウルブズは、1人のランナーを2人でタックルし、すぐに起き上がって次の防御網を敷くのを理想としている。1人目の選手が相手の動きを止め、2人目の選手がボールへ絡みつけば、相手の攻撃のテンポを遮断できる。

 しかし、この流れのなかで1人目の選手が「上」へ入ると、そのままボールへ覆いかぶさるような形となりがちだ。そうなると、2人目の選手がどこに身体を当てるべきかがわからなくなる。本来の目指す防御を遂行するためにも、1人目のタックルの「高さ」にはこだわらねばならないと稲垣は言う。

「もし上に行くのならボールをチョーク(つかみ上げる)しないといけないのですが、上に行って食い込まれている場面もあった。これでは2人目は絡めない」

 もちろん「下」へ行く際も、点検すべき項目はある。腰を落として相手に近づく際は左右へのフットワークを利かせづらくなり、十分な間合いをとった相手ランナーにうまくかわされるリスクが生じる。そのため低いタックルが得意な稲垣は、ある自己改革に取り組むという。

 最近は足をつかまずとも外国人選手を倒し切るだけのパワーとスピードがついてきたと実感。この自己分析をもとに、新たなタックルの形を模索中だ。

 サンウルブズの国内の試合での低いタックルについて「飛び込んで(相手に)外されたりするシーンもある」と課題を挙げつつ、こう続けた。

「僕も低すぎる意識があるので、(上と下の)中間を狙いたいです。それをするだけのフィジカルもついてきたので」

 相手の足と胸元の間へ自分の肩をぶつけるのが、新しく掲げた理想なのだろう。稲垣はサンウルブズへは3月下旬に合流予定。雌伏期間の自己改革で、現在3連敗中のチームに白星をもたらせるか。

(文:向 風見也)

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