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頂上決戦、紫紺の2番。4年生HO朴成浩の狂気と「死ぬ気」。

目ぢからのある明大HO朴成浩。(撮影/松本かおり)


 ただひとり異様な雰囲気だった。
 ラインアウトの練習時、眼光鋭くトイメンを指さしながら、挑発的に叫び続ける。
「来いや。おら、来いっ!」
 4年生のHO朴成浩(ぱく・そんほ/大阪朝高)だった。
 1月7日の大学選手権決勝で8連覇中の帝京大学と戦う明治大学は、キックオフ48時間前の同5日に出場予定メンバーを発表。準決勝で2番を背負った武井日向に代えて、HOの先発に気合い満点の4年生を起用する。
「大東大戦の翌日、キヨノリさん(田中澄憲ヘッドコーチ)に(決勝は)先発でいくぞ、と言われました。セットプレーを安定させて流れをつかみたいから、と」
 自信のあるスクラムとラインアウトで信頼を得た。
「(先発を告げられたときは)もう、死んでもいい、と。それくらい嬉しかった」
 命を懸けて戦う覚悟がある。

 今季は関東大学対抗戦に5試合出場し(3試合先発)、大学選手権の準決勝でも途中からピッチに立った。しかし、大学3年時までは公式戦の出場はない。だからこそ本人は、ラストイヤーにつかんだチャンスに死に物狂いだ。
「3年間試合に出られなかったけど、その間にも積み重ねてきたことがあります。それをビッグマッチにぶつけられるチャンス。すべてを出し切りたいですね」
 目をカッと見開いて、あふれ出る意欲を口にした。
「きょうの練習中のような相手への声は、試合でもいつも出しています」
 相手の闘志に火をつけそうなそれは、自身を奮い立たせているようにも聞こえる。
 ぶっとい下半身が支える体躯は175センチ、99キロ。強い意志と負けん気が詰まっている。

 今年のチームの強さを、朴は「それぞれが各局面で判断してプレーできていること」と話す。
「昨シーズンまでは結構決まりごとがが多かったのですが、今年は違う。その場、その場で考えてプレーしている分、強いと思います」
 真の意味で全員で戦うチームになる。4年生を中心に立てた目標も実現できている。
 下級生の頃、先輩たちが愚痴を口にするのを耳にして士気が下がった記憶がある。
「だから自分たちの代から、そういうことを言うのはやめよう、と徹底しました。いま、陰で不平や不満を漏らす者は一切いないと思います。(そうだからなのか)下級生から、『4年生、頑張ってください』と言われることも増えました」
 その一方で、自身は大学選手権に入ってプレータイムが短かったことに心中穏やかではなく、「もっと出せや。こっちは元気あんのや、と思っていました」と茶目っ気たっぷりに言った。
「あくまで心の中で、ですよ」

 クライマックスを迎えようとしているチームは、これまで以上に結束を固くしている。準決勝・大東大戦の先発メンバーから新しくスターターに加わったのは、自分だけではない。3番に、同じ4年生の吉岡大貴が入った。こちらの起用も、朴に2番を任せるのと同じ理由からだ。
「吉岡もセットに自信を持っている。一緒に途中出場することも多かったので、やりやすい。メンバーに4年生が増えたので、熱い戦いをやりたいですね」
 いまのところ、来年も大学に残る予定だ。時間を見つけてオーストラリアに渡り、ラグビーと語学の勉強をする希望も持っている。
「そんな感じですから、決勝は30分で死んでもいいつもりで、最初から全力で飛ばします」
 決戦の日、刺客の目をした男は、秩父宮にドスのきいた声を響かせる。背番号2の狂気が、紫紺の魂に火をつける。




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