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秋田工のモール徹底に、トライ数差で勝ち抜きの東海大仰星は何を思ったか。


東海大仰星に対しモールで攻める秋田工業(撮影:宮原和也)

 新年早々、肝を冷やしたか。

 全国高校ラグビー大会の3回戦が大阪・東大阪市花園ラグビー場内計2会場で元日にあり、第3グラウンドでは大阪府第2地区代表の東海大仰星高が秋田県代表の秋田工高と27−27で引き分け。トライ数が相手の3に対し5と上回ったことで、辛くも8強入りを決めた。秋田工高のプランに苦しみ、同点で迎えた後半ロスタイムも守勢に回った。

 東海大仰星高は過去5年で3度ファイナリストとなり、うち2度は王座についている。一方で秋田工高は1987年度に通算15回目の優勝を決めるも、1995年度を最後に決勝進出から遠ざかっている。3年ぶりの出場となった前回大会でも、シードとして登場の2回戦で涙を流した。近年の成績上は挑戦者の立ち位置だった。

 番狂わせのためにこだわったのは、モール。自立したボール保持者を軸に複数人で固まるプレーだ。空中戦のラインアウトを起点に組む典型的な形に加え、攻撃が停滞した先の接点で作るリモールというパターンも多用された。

「きょうはモール勝負だよ、と。トライを取ることと一緒に、時間を稼ぐためにも。仰星さんにボールを渡したら、全部トライになる。自分たちがトライを取れなくてもいいから、ボールをキープして、キープして…と」

 秋田工高の伊東真吾監督は言う。防御のひずみにシャープなパスを通す東海大仰星高のスタイルを踏まえ、「本来は、仰星さんのようなラグビーが理想」。それでも頑健な教え子を勝たせるべく、「高校ラグビーまでならなんとか通用する」という今回の戦法を打ち出した。

「あくまで勝つためにやっているので」

 17−6と東海大仰星高のリードで前半を終えると、秋田工高陣営はモールへこだわる姿勢を再確認する。思いが結実したのは、後半4分だった。

 自陣でリモールを組み、前進。その左側のスペースへ、昨季から高校日本代表だったCTBの児玉樹主将が突っ込む。敵陣10メートル線付近へ進むと、モールで汗をかくFW陣らがラック(ボール保持者が倒された接点)を連取。左中間へ進む。最後は球の出所からSHの柴田凌光が一気に突っ切り、17−13と迫った。

 続く8分には22−13と差を広げられたが、13分にはまたもモールで追い上げる。
 まずは失点直後のキックオフ時、FLの菅原優希がタックルで相手ランナーを左タッチラインの外へ出す。直後のラインアウトこそ捕球に手間取ったが、PRの小島燎成らが先頭に立ってリモール。FLの菅原、LOの落合蓮らバックファイブと呼ばれる面々が側面の壁となる。

 秋田工高のモールには、仲間同士で守るべき約束事がある。前方でボール保持者を守る「核」を作り、後列に入った選手が密着して足をかく…。

 身長183センチ、体重117キロで高校日本代表候補の小島は、システムと呼ぶべき秋田工高のモールの肝をこう明かす。

「しっかり核を組まないと、モールは成り立たない。まずは僕ら(横幅の)でかい選手が核を組んで、バックファイブの選手が押す。(組み始めの形が)そうなるように工夫をしながら、自分たちの強いモールが組めるようにしました」

 団結の証であるモールが敵陣22メートル線付近まで進むと、中央に立っていた身長191センチ、体重101キロの児玉が防御を破る。東海大仰星高の反則を誘う。ペナルティキックを得ると、伊東監督はベンチから叫ぶ。

「樹が行って(突進して)リモール!」

 その通りにした。22−20と迫った。小島は言い切る。

「モールを組むと話し合っていて、そうすれば勝てると信じていた。だから身体が痛いとか、疲れているとかは、全然気にならなかったです」

 東海大仰星高はこの失点時、チームの反則の繰り返しでFLの魚谷勇波が一時退場処分を食らった。その間にあたる21分には、秋田工のモール攻勢で22−27と勝ち越された。攻め込む際の連携にも苦しみ、WTBの河瀬諒介もこう反省する。

「チャンスでハンドリングミスがあった。(ランナーの近くへ)走り込んでくる選手に強い(捕りづらい)パスを…という部分があったので」
 後半27分には着実なパス回しで同点とするも、次のキックオフの直後、児玉のタックルを食らって秋田工高へボールを与える。自陣ゴール前右隅へ駆け戻った河瀬がトライを狙う相手を捕まえたが、首より高い位置へ腕を伸ばしたとしてハイタックルと判定される。

 インゴールでペナルティを犯した場合、「そのプレーがなければトライが決まっていた」として相手の認定トライが決まる場合が多い。しかしこの時はそうならず、東海大仰星高は命拾いした形で駒を進めたのだった。湯浅大智監督の述懐。

「ボールが動くゲームにしていきたかったですが、ボールを握られる時間が長く、うちの子たちもどうしようと思ったのではと感じます。ボールゲームに持っていくのが上手じゃないな、と。こちらの指導不足でした」

 東海大仰星高が理想の試合展開に持ち込めなかった理由は、プレッシャー下でのエラーと、何より秋田工高のモールだった。前者はともかく、後者はどう受け止めるべきなのか。湯浅監督は、現象に即して答える。

「もう少し、モールを科学的に勉強することが必要だと思いました。どう入ればいいか(相手のモールが崩れるか)、外から見ていてもわかる部分がありますので。それを現場の選手が感じて出せていないところは、考え方が甘いな、ということですね」

 次戦以降のことも考えてか、具体的に「どう入る」かの明言こそしなかった。しかし一般論として、強力なモールを防ぐには先頭のボール保持者を倒す、ボール保持者とそれを保護する選手の間に身体をねじ込み斜め前方へ押すなどの対策が有効。コラプシング(塊を故意に崩す)、オフサイド(攻防の境界線への横入り)などの反則にもつながりがちなこれらのプレーを、「勇気を持ってやらなきゃいけない」と湯浅監督は考えているようだ。

「秋田工さんにはボールを確保してコントロールするという意図が見えました。そこをコントロールさせない方法はいくつもあるんですけど、そのことを準備の段階で伝えきれていなかったという反省があります。リスクを背負いつつも、相手からどうボールを獲るかを考えなくてはいけない。その考え方、動き方が個々に浸透させられなかった」

 チャレンジャーの圧力で星を落としそうになった元日の試合を乗り切った東海大仰星高は、続く3日の準々決勝で兵庫県代表の報徳学園高とぶつかる。
(文:向 風見也)

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