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安心してください。NECはやれる。SO森田洋介の感じる変化と手応え。

NECの10番を背負うSO森田洋介。タックルにも自信あり。(撮影/松本かおり)


 必死さと一体感は伝わってきた。
 勝利は逃したが、観戦者に響くものはあった。
 9月8日に秩父宮ラグビー場でおこなわれたNEC×神戸製鋼。グリーンロケッツは12-29と敗れた。素晴らしい立ち上がりを見せた神戸製鋼に前半15分で3トライを奪われ、16点を先行されたのが痛かった。
 しかし、ずるずると後退し続けなかった。ボールをよく動かし、ディフェンスでも粘る。特に後半はまとまり、2トライを奪った。

 SH茂野海人(現トヨタ自動車)、SO田村優(現キヤノン)のHB団など、昨季までの主力が10人近く抜けた今季。荒天下での開幕戦では東芝に0-20と敗れるスタートだったが、その後コカ・コーラ、豊田自動織機に勝ち、この日の神戸製鋼戦までの戦績を2勝2敗とした。踏ん張っている。
 神戸製鋼戦の敗戦を「悔しい負けです。キックオフボールを相手に取られて、後手後手にまわってしまった。(自分たちが)ふわっとしていたワケじゃありませんが、相手はやりたいことを集中力高くやってきた」と振り返ったのはSO森田洋介だ。
 立ち上がりを悔やんで言葉を続けた。
「(その後、攻め込んだ場面もあったが)パスカットされてトライを奪われ、流れを分断されてしまったのが痛かった。今週やろうとしてきたことをやれなかった。継続できなかった」
 チームは、強力FWを擁する相手との真っ向勝負を避けるため、ボールを動かすつもりでいた。しかし神戸製鋼のディフェンスはアウトサイドが前へ出てスペースを消してきた。
「先手を打たれた。後半になって展開できた時間帯はうまくいったのですが」
 全員が勝つ気で臨んだ試合だっただけに結果は悔しい。でも、後半のパフォーマンスに収穫はあった。

 ここまでの4試合で10番を背負い続けている森田は、同志社大学から入社して今季が7年目になる。昨季は12試合に出場も、SOでの先発は一度もなかった。そこには、不動の司令塔として田村が立ちはだかっていたからだ。
 ライバルとは同期入社の新司令塔は、仲のいい友がチームを去る寂しさと、それによって出番が自分に巡ってきた状況を「複雑」と言った。
「(田村との)ポジション争いに勝てない悔しさがある中で、(移籍による)繰り上げ当選と思われても仕方ない状況です、それは悔しいことですが、そんなことを気にしていても仕方がない。シーズンは(容赦なく)始まっているんですから、やるしかない。いいプレーをして、NECは(これまでとは)違う形で強くなったね、と言われるようにしたいし、そう言われるなら嬉しいですね。自分ができることをやる」
 10番を背負う責任を感じながら練習でも試合でも動いている。「若かったら(重責に)てんぱっていたかもしれませんが、もう中堅。落ち着いてやれている」と話す。

 日本代表、サンウルブズで活躍する天才肌の田村とはタイプも強みも違う。「同じことはやれない。自分のスタイルで」と話すのも、チームに求められていること、自身の力をよく理解しているからだ。
 チームを勝利へのロードマップに沿って走らせる。仲間の力を結集させる。それが役目と考える。
「相手を分析し、チームの上の人たちが考えたプランを明確にすると同時にシンプルな言葉にして、メンバーに浸透させる。そして実行する」
 自分はそんなSOだ。だから今季は練習中から発言も増えたし、発する言葉への責任感も高まった。試合中も周囲とコミュニケーションを密にし、情報を共有。「いまの、ここで(パスを)ほしかったとか、よく喋る」ようにしている。「コーチ陣からおりてきたことをインプットして、みんなにアウトプットする。その作業によって、自分の中で、やるべきことがより明確になる」と話す。

 変化しているのは自分だけではないと感じている。
 チーム全体が昨年までとは変わった。
「これまでは田村がいたので、自分も頼っていたところがあった。チームもそうだったと思うんです。田村のゲームメイクに頼る。キックで何とかしてくれるだろうと考えたり。そういう感覚は、ニリ(ラトゥ)や(ネマニ)ナドロがいた時代も、どこかにあった。でもいまは、そういうものが一切なくなった。みんなでなんとかしようとしています」
 例えばFW。去年まではある意味、司令塔の指示通りにばかり動いていた。しかし今季は自主性がある。普段から、「こうしよう」、「こうした方がいい」と多くの意見が出るようになった。
 スター選手が頑張って勝つスタイルから、全員で勝利をつかむチームへ。
「(自分が個々の強みを引き出して)15人一体となったラグビーをできるなら、それが去年までとの違いになるし、自分のSOとしてのスタイルを出せていることになる。チームはユニティー(UNITY)をスローガンとしています。団体スポーツなので団結力を出したい。それを実現できたらSO冥利に尽きますね」

 チームを支えてきたたくさんの選手たちが抜けて、周囲にチームを心配する声があることは感じている。しかし、28歳の新司令塔は「大丈夫です」と表情は明るい。
「若手もどんどん力を伸ばしています。チャンスを得た選手たちも。みんな、大学時代は活躍していた選手たちです。これまで(ピッチに立つ)機会が少なかっただけで、やれる。いま多くの選手から、チャンスと感じている気持ちが伝わってきます」
 グリーンロケッツの選手たちは夜の秩父宮ラグビー場での試合が終われば、常磐線に乗ってホームタウンの我孫子に帰っていく。金曜の夜ともなれば遅い時間でも混んでいるから、自分で数百円のグリーン車に乗り、車内で軽く乾いた喉を潤す選手も。地元に戻っていつもの場所にて、杯を酌み交わすこともある。
 開幕4戦で2勝。残り試合、祝杯をあげる機会をできるだけ増やしたい。


 

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