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<不定期連載 壁を打ち破れ! 〜サンウルブズの挑戦> 上野裕一ジャパンエスアール会長が考える日本ラグビー未来像B 「サンウルブズファンの熱狂を高く評価するSANZAAR。新たなSRアジアフランチャイズも視野に?」

4月14日のクライストチャーチではクルセイダーズのジャージーにサンウルブズのハチマキを巻いて観戦する地元ファンも。狼たちは各地で自分たちの次に応援したいチームとして認識されるようになっている
(撮影:出村謙知)


 スーパーラグビー(SR)2018年シーズンのフォーマットが決まりました。
 現行の18チームから3フランチャイズ削減されるかたちでチーム数は15となると同時に、カンファレンスも見直しとなり、サンウルブズは現在のアフリカ1カンファレンスからオーストラリアカンファレンスへと移り、来シーズン以降戦っていくことになりました。

 チーム数の削減に関しては、SANZAARによる正式発表以前からさまざまな噂が流れていたこともあり、あるいはファンのみなさんの中にはサンウルブズが来シーズン以降もSRに参加していけるかどうか、心配されていた方もいるかもしれません。

 私自身、以前はサンウルブズのCEO、現在は同・会長として、SANZAAR、あるいは各SRフランチャイズの関係者との交渉に当たってきた立場もあり、正式発表までは情報を表にすることができず、ファンの方々がジレンマを感じていたような面があったとしたなら、その点に関してはお詫びするしかありません。

 それでも、公式、そして非公式の場で南半球のラグビー関係者と言葉を交わして行く中で、私自身は割と早い段階からサンウルブズがSRの枠から外れることはないという感触は持っていました。

 昨年4月8日のストーマーズとのアウェー戦を前に、ケープタウンでSANZAAR関係者と個人的に会った時も、同じく昨年の11月にシドニーで行われたSRのCEO会議の際も、日本のサンウルブズへの評価はすこぶる高かった。その時点ですでにサンウルブズを外そうという空気はほぼなかった。

 15戦して1勝1分という成績も、敗れた試合に関しても競ったゲームが少なくなかったこともあり、最初のシーズンとしては一定の評価を受けました。今季、2シーズン目を迎えるサンウルブズに対して、すでに紹介したように、SANZAAR側が提示した強化目標もコンペティティブ(競争力のある)からエリジブル(適格な)チームへと変わったことがその証左ともいえます。
 そして、何よりも南半球のラグビー関係者から賞賛を受けたのが、スタジアムに駆けつけてくれるファンの多さと、そのファンとともにサンウルブズが新たなラグビー文化を作り上げた点に関してです。
 「オオカミの遠吠え」はその最たる例でしょう。

 サンウルブズほど、ファンのみなさんひとりひとりに支えられているチームはない。
 その点に関しては、ただただ感謝するばかりですが、もともと、構造的にもサンウルブズはSRフランチャイズの中で一番盛況なチームにならないといけない宿命にあるのも事実です。

 SRを統括するSANZAARとは周知のとおり、南アフリカ、ニュージーランド、オーストラリア、そしてアルゼンチンの各ラグビー協会のジョイントベンチャー(JB)です。アルゼンチンも出資するようになったからこそ、それまでのSANZARからSANZAARになったわけです。

 その一方で、日本協会はこのJBには参加していません。その結果、我々には他の4か国のフランチャイズが得られる放映権料収入がない。だから、実際にファンのみなさんにスタジアムに足を運んでいただき、楽しんでいただいて、また次の試合にも来ていただく。そうして、サンウルブズ独自のラグビー文化を発展させていく。
 それが唯一の生き残っていく道だということ。本当にファンのみなさんに支えられているのです。

 だからこそ、常に質の高いパフォーマンスを見せながら、2019年につながるような結果を残し、さらにラグビースタジアム周辺をエンターテイメント性の高い場所にしていく努力を続ける必要がある。

 まだ2シーズン目ですが、サンウルブズがファンのみなさんと一緒に、壁を打ち破りながら新たな魅力的なチームと文化を生み出す努力をしてきたことに関しては、SANZAAR幹部も高く評価してくれていますし、現実的に削減候補の危機にあるオーストラリアや南アフリカのフランチャイズ関係者さえ賞賛してくれていたりします。

 サンウルブズがファンのみなさんと一緒にしているチャレンジは今まで誰もやったことのないもの。
 世界的なプロリーグに日本単体のチームとして乗り込む。まったくの新しい事業として、ゼロからのスタートでもありました。

 ファンのみなさんは、まだまだご不満も多く抱えていらっしゃるとは思いますが、マネジメント側も水面下ではがんばってきたつもりです。

 もともと、アジア志向のあったSANZAARですが、サンウルブズがすでに、他のフランチャイズのファンにとっても自分たちの次に応援するチームという特異なポジションも得るなど、しっかりとした存在感を示せていることもあり、アジアでフランチャイズを増やしたい意向が強くなっています。

 もちろん、サンウルブズのデュアルフランチャイズでもあるシンガポールや、アジアの中で独自のラグビー文化を築いてきた香港なども候補になってくるでしょうが、それではヨーロッパ色が強くなってしまう面もある。
 本当の意味での新たなアジアフランチャイズという側面で言うなら、サンウルブズに続くチームも現状としては日本ベースのチームになるのがベストだと個人的には思っています。

 そうなった時、サンウルブズがいままで誰もしたことのない先駆的なチャレンジをしてきた意義もさらに大きくなっていくはずです。

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<プロフィール>
上野裕一(うえの ゆういち)

ビジョンは I contribute to the world peace through the development of rugby.
1961年、山梨県出身。県立日川高校、日本体育大学出身。現役時代のポジションはSO。
同大大学院終了。オタゴ大客員研究員。流通経済大教授、同大ラグビー部監督、同CEOなどを歴任後、現在は同大学長補佐。在任中に弘前大学大学院医学研究科にて医学博士取得。
一般社団法人 ジャパンエスアール会長。アジア地域出身者では2人しかいないワールドラグビー「マスタートレーナー」(指導者養成者としての最高資格)も有する。
『ラグビー観戦メソッド 3つの遊びでスッキリわかる』(叢文社)など著書、共著、監修本など多数。

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