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8連覇目指す帝京大の吉田杏。「ふたつの位置」でわかったこと。


関東大学ジュニア選手権決勝、NO8とWTBでプレーした帝京大の吉田杏(撮影:松本かおり)

 帝京大は、所属する関東大学対抗戦Aでここまで全勝。大学選手権8連覇と日本選手権でのトップリーグ勢撃破に向け、着々と歩みを進めている。

 そんななか、岩出雅之監督が「メイク・ディファレンス。違うことしよう」と言って着手したのが、レギュラー候補のコンバートだ。大阪桐蔭高時代は高校日本代表だった吉田杏は、11月から本職のNO8と新天地のWTBを掛け持ちしている。

 身長186センチ、体重108キロの体躯で正面衝突などの「痛いプレー」を心掛ける3年生は、今春、ようやく先発に定着しかけたところだった。

 接点周りでの突進役という本職と、タッチライン際で相手キックの処理とラインブレイクを求められる新ポジションを遂行する。そんな難しい役どころにも、ただただ前向きに取り組んでいる。

「嫌というのはなく。自分自身、やることは一緒だと思っている。強みであるランプレー、コンタクトを最大限に、全面的に出していきたい、と」

 11月26日、東京・秩父宮ラグビー場。控え選手同士の公式戦、関東大学ジュニア選手権のカテゴリー1決勝に出場した。

 試合は35−7で制してタイトル獲得を決めたが、終始、東海大の防御に手を焼いた。CTBの重一生ら主力チームの選手も並べながら、前半は14−0とわずかなリードに終わっていた。経験者としてのリーダーシップを求められていた吉田は、こう振り返った。

「プレーの面で引っ張って行けるように、アタック、ディフェンスともに激しく。そう思って、試合に臨みました。東海大さんの勢いのあるディフェンスに受けてしまった(受け身になった)ことが、序盤の接戦につながったのだと思います。そこは課題として、チームに持ち帰りたいです」

 とはいえこの日も、吉田ならではの価値を示した。前半はNO8、後半はWTBとしてフィールドを駆けたのだ。

 岩出監督は、後半から空中戦のラインアウトを強化したいと感じて身長191センチのLO藤田達成を投入。1年生WTBである亀井康平が退いた代わりに、吉田がWTBに回っていた。

 前半から縦突破でスタンドを沸かせた吉田は、後半から異なる立ち位置でゲームに参画。27分に帝京大のFW陣がラックを連取してスコアを21−7としたシーンでは、右タッチライン際で待機していた。
 
 本能的に、自分もラックの周りへ突っ込みたくならないのだろうか。そう問われた吉田は、笑ってこう続けた。

「いやぁ、行きたいですけど…。外にいるのがWTBの仕事なので。自分の仕事をやらないといけない。行きたいという気持ちは抑えています!」

 ノーサイド直前には、敵陣10メートル線付近右のスクラムから出たパスを最初に捕球。直進。相手のタックラーを吹き飛ばし、試合を締めくくるトライをマークした。

「コンタクトとランが強み。そこで相手を圧倒したいと思っていて、あのプレーができた」

 こう語った吉田がいまの状況下で再確認するのは、相互理解の大切さだという。

 例えば、相手のキックに備えて守備網の後方に入る時。おもに最後尾の端に立つWTBは、その少し手前に立つNO8に「下がれ!」と声をかける。もっとも衝突を愛する傾向の強いNO8としては、その目の前で繰り広げられる肉弾戦に意識が傾くもの。「下がれ!」の声に、素直に反応しにくくなる人もゼロではない。

 ところが吉田は、WTBの立場を経験することで、他のWTBが自分に「下がれ!」と言う意味が身に染みてわかったという。キックされたボールを捕った直後、周りに仲間が多いほど弾道を追ってくる敵をパスやランで攻略しやすくなる。逆に、捕球したWTBの周りにサポートがいなければ、狙い撃ちに駆けてくる相手タックラーの餌食となってしまう。

 以前から知っていたラグビーの法則に、当事者意識を持てたことが大きいと吉田は言う。

「BKが1枚、(タックラーに倒されたり、接点への援護に入ったりして)巻き込まれると、次のアタックのオプションが減る。FWとBKのコミュニケーションの必要性、BKの気持ちが改めてわかりました。自分もNO8をやっていたので、キック処理の時に下がってもらう時の伝え方がわかっていたりも…。WTBに入ることで、FWとは違った(間合いなどでの)ボールのもらい方も学んでいるところです」

 同じ場面に存在する、「下がれ!」と言う側と「下がれ!」と言われる側。その両方の考えを知る吉田は、自分がNO8に入る際はWTBのニーズに応えようとするし、WTBに入ればその折のNO8が応じやすい声のかけ方を心がける。

 チームタイトル獲得に向け、「それぞれを逆の立場に立ってみて考えることが多くなって、いい勉強になっています」。クラブの求める「大人」の選手として、殊勝に語った。
(文:向 風見也)

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