ラグリパWest! 関西「生」情報もいくで。

選抜出場を突破口に。福岡県立福岡工業高校

香椎を56−0で破った後、応援席にあいさつをする福岡工の選手たち。



 まさに電光石火だった。
 キックボールをうけたFB本多覚士は右横にかっとぶ。突っ込んで来るタックラー2人をスピードでかわし、進路を立てる。
 逃げは約50メートル。ボールを返す。最後はCTB新田拓哉がインゴールに飛び込む。

 前半開始早々のノーホイッスルトライ。攻め手は緩めない。10トライを獲る。
 この春、高校選抜大会に初出場した福岡工が香椎に56−0と大勝する。
 選抜後、最初の公式戦は5月13日。福岡県大会(春季大会)の3回戦だった。

 全国レベルのランを見せた本多は笑う。
「基本、自分で行って、空いたらパスを放ります。それがうまくいきました」
 172センチ、71キロとサイズはそう大きくないものの、前半15分には右に左にスキーのスラロームのように柔らかく走る。約70メートル先のトライラインを越えた。

 快勝に、監督で保健・体育教員でもある大神正徳の弁舌は滑らかだった。
「ウチはどちらかと言えばFWのチームなので、今日は課題の展開に重点をおきました。普段は出られないメンバーを4人ほど先発で使いましたが、よくやってくれました」
 最後尾にいるFB本多が目立ったのは、大神の狙い通りだったことになる。

 福岡工は今年1月の県新人戦で3位に入った。その結果などが考慮され、選抜大会実行委員会推薦枠で初めて埼玉・熊谷の土を踏む。
 予選Cグループでは3戦して全敗する。
 4強入りする天理(奈良)には0−94、佐野日大(栃木)には12−62、函館ラ・サール(北海道)には26−38だった。

 大神は全国大会を振り返る。
「いい経験を積ませてもらえました。特に差を感じたのは体の面ですね」
 主将のFL平井喬士は話す。
「これまで以上にウエイトトレに集中するようにしました」
 週3回、各1時間のバーベルとの格闘で開きを埋めようとする。

 本多は言う。
「松井先生が来て下さって、効果的に体幹を鍛えるメニューをこなしています」
 この4月、OBでもある保健・体育教員の松井裕平が福岡西陵から転勤してきた。大神の前回の赴任時代の教え子でもある。
 福岡大ではPRだった松井は、経験から身につくトレーニングを理解している。
 平井は成果をつかんでいる。
「選抜から帰ってきて1か月でベンチプレスのMAXが85から90キロになりました」

 福岡工の歴史は長い。
 学校創立は1896年(明治29)。日清戦争の2年後だ。現在、建築や機械工学など8学科と工業進学コース、定時制を有する。
 部が結成されたのは、太平洋戦争中の1942年(昭和17)。創部77年目になる。
 部の主なOBには、トップリーグ・宗像サニックス出身で関西大ヘッドコーチの園田晃将、九州産業大監督の星野剛らがいる。

 福岡工は、1955年から1975年の20年間、県の高校ラグビーを福岡、福岡電波(現福工大城東)などとともに引っ張った。
 全国大会は1956年の36回から1975年の54回まで県出場枠が2だったこともあり、最長5年連続を含めて15回の出場がある。
 県内では3位。福岡の37回(旧制中学時代に15回)、東福岡の28回に次ぐ。

 出場回数15の中で4強1回(36回)、8強2回(42、49回)を記録する。
 1961年の40回大会では11回目の優勝を果たす秋田工(秋田)に1回戦で3−6。この3点差は5試合における最小得失点差になった。全国制覇にもっとも近い年だった。

 最後の花園出場は1975年の54回大会。40年以上も前であるため、現役に強かった実感はない中、本多は反応する。
「おじさんがOB会長なので、昔のことは聞いていました」
 母方の伯父・田口辰二はOBを束ねる。

 その状況下で、60歳定年まで3年を残す大神はチームの再浮上を目指す。
「ヒガシ以外の8チームは横一線です。筑紫、東筑、小倉、修猷館…」
 全国優勝6回を誇る「ジャイアント」の東福岡には1月の県新人戦準決勝で0−104。難易度の高さを知りながら、まずは2番手グループから抜け出し、挑戦資格を得たい。

 大神は地元の糸島から日本体育大に進む。現役時代はNO8やCTB。同期は「ヤサカのシンゴ」こと山本清悟(現・奈良朱雀監督)。伏見工(現・京都工学院)が、世に知られる時期に活躍したやんちゃくれと楕円球を追う。
 大神はまた、神主でもある。
 実家は糸島にある老松神社。信州・川中島で戦国大名の武田信玄と上杉謙信が戦った永禄年間(1558〜1570年)に創建された。大神は大学卒業後、國學院大で資格を得る。
 教育心と信仰心を持つ大神は、伝統を守り、つなぐことの何たるかを知る。

 新1年生は選手15人が入部した。プレーヤーの総数は48人になった。余裕を持って紅白戦ができる現状は利が多い。
「次がヤマですね」
 大神は見据える。5月20日、準々決勝は筑紫丘を14−7で下した小倉と対戦する(グローバルアリーナ、12時20分キックオフ)。日本代表のWTB山田章仁をOBに持つチームはFWとBKのバランスが取れている。
 胸に赤線2本が入る黒ジャージーの真の復活のため、ここをクリアしたい。
(文:鎮 勝也)





srRMワールドカップ2019ラグリパcolumn2