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人数不足はタフさでカバー 大阪朝鮮高級学校

実質21人で近畿大会出場を決めた大阪朝鮮高級学校。
前列左から5人目が李承信主将、2列目右端が権晶秀監督


 大阪朝鮮高級学校の提出メンバー表は25枠のうち、22しか埋まらなかった。
 近畿大会の府予選決勝の朝である。
 22人目のWTB金純海(きむ・すね)は鎖骨が折れている。回復はしていたが、完治はしていない。冬の花園出場9回、準決勝進出2回の強豪は実質21人で試合に臨む。

 2月4日、大産大附戦は拮抗する。0−14の前半26分から伝統のモール2つを含む4連続トライで逆転。最終的には31−28で2年連続13回目の本大会出場を決めた。
「うれしいですね。この人数で選手たちはよくやってくれたと思います」
 社会科教員で、今年4月から監督4年目に入る権晶秀(こん・じょんす)は口元をほころばせた。

 現在の部員数は新3年=15、新2年=11の計26人である。
 少子化の上、私学無償化対象にならず授業料がかかることや北朝鮮との関係などもあり、朝鮮語で民族学を受ける生徒は減っている。男女共学ながら100人を切る学年もある。
 3年間、年末年始の全国舞台から遠ざかっていることも無縁ではない。94回大会(2014年度)の8強敗退がその最後だ。

 大阪朝高とは違い、残り3代表の部員数は潤沢だ。昨年の『全国大会大阪予選パンフレット』を参考にすれば、大阪桐蔭は45、常翔学園は59、東海大仰星は61である。
 また、同じDブロックでも準決勝で40−19と下した関大北陽は62人、大産大附は60人の部員がいる。倍以上である。

 絶対数が不足する中で、「死」と表現されるブロックを制する。ここには3か月前の全国予選決勝で敗れた3チームがすべて入る。
 30人が必要な是非ものの試合形式の練習は、引退した部員たちが力を貸した。主将のCTB李承信(り・すんしん)は話す。
「人数は関係ありません。これまでの先輩方も少ない中でやってきました。1人1人が意識を高く持てばいいと思います」

 前監督の呉英吉(お・よんぎる)は李の言葉を捕捉する。
「元々ウチは少ないメンバーでやってきました。最初に花園に出た時もそうだった。だから元に戻ったと思ってやればいいんですよ」
 呉は現在、NTTドコモの採用担当をしながらコーチを続ける。全国初出場の83回大会(2003年度)は最初のコーチ時代だった。2回戦で4強入りする正智深谷に24−40で敗北。この時、2、3年生は22人だった。

 権は東海大仰星監督の湯浅大智から、昨年暮れの全国大会期間中、合同練習に誘われた。
「コンちゃんは同期ですし、頑張ってほしいんですよね」
 権は振り返る。
「誘ってもらってありがたかったけど行けませんでした。ケガ人が多くて16人しかいなくて…。その時、チームはガタガタでした」
 湯浅はその97回大会で頂点に立つ。同じ36歳の権は、監督5年で全国優勝3回、準優勝1回を誇る名将に大切にされている。

 年が明けた1月4日から8日まで、時期的には初めての校内合宿を張った。
 2部練習。移動ストーブしかない教室で寝泊まりする。風呂は銭湯。食事の準備は保護者を手伝った。5、8日は徒歩で20分程度の花園に行き、全国大会準決勝、決勝を観戦する。4泊5日の成果を李は説明する。
「朝は6時に起きて、掃除から始めました。集団生活の中で規律を守ることであるとか、組織力がついたと思います」

 2月10日、学校には2015年のワールドカップメンバーで日本代表の主将をつとめた廣瀬俊朗(東芝BKコーチ)が講演と練習視察に訪れた。
 権や湯浅と同級生の廣瀬は、南アフリカ戦を34−32で勝ち切ったキーワード、Tough(不屈さ)、Smart(頭のよさ)、 Mental(精神力)などを説明する。
 部員たちは講演後、柔道場でのタックル練習を終え、氷雨の中、土のグラウンドでドロドロになりながら試合形式を繰り返した。
 廣瀬は感じ入る。
「何がタフって、彼らが一番タフですよね」

 FL朴祐亨(ぱく・うひょん)は兵庫・姫路から通っている。朝4時30分に起き、5時発のJR始発に乗る。東大阪にある学校到着は7時20分。行きの通学時間は2時間30分を要する。そこから朝練をする。
「強い朝高でラグビーをやりたかったから、しんどくはありません。大阪までの1時間半くらいは座って寝られますから」
 帰りは新快速があるので2時間。この生活が3年目に入る。タフさは個人にも宿る。

 第69回近畿大会は3月11日に開幕する。組み合わせは2月18日に決まる。
 2つ勝って4強入りすれば、第19回全国選抜大会の出場を確実にする。ただ、攻守の軸となる李が2戦目には出られない。3月13日から、高校日本代表のアイルランド遠征直前合宿に参加する。
 権は前向きな姿勢を崩さない。
「スンシンに依存しないチームにするためのチャンスととらえねばなりません」

 李の穴を埋めるのは超高校級の重量を持つフロントローだ。李優河(り・うは)、高太佑(こ・てう)、崔暢賢(ちぇ・ちゃんひょん)は110、100、110キロ。1.5メートルしか押せないスクラムでターンオーバーを奪う。
「どの試合でも1つは取りますね。大産大附の試合は2つありました」
 控えめな権が自信をのぞかせる8人の組み合いを軸に、突破口を開きたい。
 タフさをラグビー愛好者たちに示すには、絶好の機会である。
(文:鎮 勝也)
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