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近鉄、自動降格回避に挑む。

宗像サニックス戦(1月6日)敗戦後のトンプソン ルーク。
チームOBでもある関西協会・坂田好弘会長と言葉を交わす。(撮影/松本かおり)



 1月8日午後、花園ラグビー場では歓喜と悲嘆の涙に雨が交じる。高校ラグビー決勝は東海大仰星が大阪桐蔭を27−20で降した。
 試合後、摂南大総監督の河瀬泰治はバックスタンド下で佇む。長男・諒介との父子優勝のよろこびにひとり浸っていた。

 その前をエンジや濃紺のウインドブレイカーを着た選手たちが、会釈して第2グラウンドへ向かう。NTTドコモとのトップリーグ自動降格戦に臨む近鉄である。
 来季、格下のトップチャレンジ所属を決定づける試合は1月13日、地元のヤンマースタジアム長居で11時30分に始まる。

「俺、どっちにも勝ってほしい。両方ともに教え子がおるし、お世話になってる。せやから、試合に行くんやったら、スタジアムの真ん中に座らんとアカン」
 河瀬率いる摂南大の出身者としては、近鉄に主将のHO樫本敦、SH森雄祐がいる。ドコモにはLOイオンギ譲。この春にはCTBサミソニ・トゥアが加わる。

「でも、近鉄が落ちたらさびしいなあ」
 複雑な思いの中、つぶやきが漏れる。
 河瀬は1959年生まれ。近鉄の創部は30年早い1929年(昭和4)。秩父宮殿下お声がかりの花園ラグビー場完成と同時だった。
 所属はなかったものの、NO8として日本代表キャップ10を得るこれまで58年の人生に、近鉄は存在し続けていた。
 トップリーグでは神戸製鋼より1年遅れるも、2番目に長い歴史を持つ。来年90周年。トップリーグの前身である全国社会人大会8回、日本選手権3回の優勝がある。ラグビー殿堂入りしている関西ラグビー協会会長の坂田好弘も黄金期に籍を置いた。

 今から21年前、1997年に部長だった藤井賢三(故人)が会社に報告書を送っている。
<現在のチーム力では正直なところ関西Aリーグで4位から6位を保つのが精一杯の状況である。(中略)。Bリーグ転落の可能性もある。辛うじてこれを支えているのは、やはり過去の栄光=伝統を汚すまいとして努力する選手たちの気力ではないかと考える>
 消滅したプロ野球球団・近鉄バファローズの社長もつとめた藤井の指摘は的確だった。憂いはかって現実のものとなる。

 トップリーグ2年目の2004年度。参加12チーム中11位となりトップウェストに降格した。2005年度から3シーズンを下で戦う。
 FL佐藤幹夫は当時を知る。近鉄一筋16年、コーチ兼任の38歳の顔はゆがむ。
「一緒にやってきた仲間が1年ごとに10人ちかくやめていきました。15人の時もありました。本当につらかったです。昇格するために血の入れ替えは必要です。チームの理屈がわからないわけではない。でも、もうあんな思いはしたくありません」

 今季の近鉄は決定力不足が顕著だった。リーグ戦の1試合平均得点16は、レッドカンファレンス8チームで最低。首位・サントリーの35点とは実に倍以上の開きがある。
 FBセミシ・マシレワの切れのあるステップは光ったが、あとが続かない。

 レッドカンファレンス最下位で臨んだ1月6日の「13位決定トーナメント」ではホワイトカンファレンス7位のサニックスに8−29と完敗した。
 監督の坪井章は視線を落とす。
「いい準備ができていたし、自信がありました。でも相手に強みを消されてしまいました。スクラムなどセットプレーで圧倒できなかった。監督として責任を感じています」

 今季、ドコモとは対戦済み。9月24日に21−31と敗北する。その時、先発した2年目のSO野口大輔は今回も出場が濃厚だ。
 今季チーム最多の59得点を記録しているキッカーは再戦の展望を語る。
「トライが少ないことはわかっています。だから、考えながらキックを使って、攻めている意識を持たせたい。相手にプレッシャーを与えるアタックをしたいです」

 坪井は大阪桐蔭、野口は東海大仰星のOBでもある。母校の戦いに刺激を受ける。
 坪井は初めて花園に出た75回大会(1995年度)でFL、そして主将だった。3回戦で伏見工に17−31で敗れる。
 今回、バックスタンド内にあるクラブハウスにいながら、試合は見られなかった。
「ミーティングがありました。負けたけど、ベスト4の壁を破ってくれてよかった」
 野口は91回大会(2011年度)で東福岡に24−36で屈するも副将として準優勝する。
「優勝した後輩たちはすごいと思います。僕も負けてはいられません」

 チーム広報である吉田悦朗は、当日の会社の支援体制を説明する。
「応援に来てくれたグループ会社の社員とその家族は入場料を無料にします」
 近鉄はJRを除けば営業距離数日本一の本業・鉄道以外にバス、タクシー、不動産、百貨店など100近くのグループ会社を持つ。
「スタジアムを揺るがす大応援でチームの後押しを考えています」

 FLトンプソン ルークは力を込める。
「次は負けたら絶対ダメね。最高のゲームをしないといけないよ」
 日本代表キャップ64を持つ近鉄の英雄は36歳。今季、チームで唯一14の公式戦すべてで80分間フル出場をする。
「疲れてないね。大丈夫。ラグビー選手はラグビーをしないといけない。休みはシーズンが終わってからいっぱいあるからね」

 13日を前に、GMの木村雅裕は話す。
「中井に会ってくるつもりです」
 京都産業大出身の中井太喜は、2013年5月12日、がんのため旅立つ。24歳だった。粘り腰でタックラーをふりほどいたFLは生まれ育った枚方の霊園に眠る。
 木村は空にある力を借りに行く。

 坪井はぽつりと言った。
「13日は僕の誕生日なんです。40歳になります。すごいタイミングでしょう」
 思い出深き不惑にするためにも、90年の伝統を信じ、「大阪ダービー」を戦いたい。
(文:鎮 勝也)




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