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サンウルブズで2年目の挑戦 田中誠人チームドクター

サンウルブズのチームドクターをつとめる田中誠人さん


 サンウルブズとともに、スーパーラグビー2年目に挑む。
 チームドクターの田中誠人(まこと)。44歳。肩を専門とする整形外科医である。
「とても名誉なことです。サンウルブズはジャパンと変わりませんから」
 基本的にはこの選手らを軸に日本代表は決まる。そのチームに携わる幸せがある。

 サンウルブズのチームドクターは整形外科医3人。昨年から不動だ。脊髄(せきずい)を得意とする坂根正孝、膝の経験が豊富な村上秀孝、そして最年少の田中である。
「僕が肩なので、いいバランスですよね」
 2017年シーズンは昨年同様15試合制。海外遠征を含めて1人5試合ずつ担当する。
 田中は練習も含め今年は7週間ほどチームに帯同する。その間、勤務は休む。兵庫県西宮市にある自宅にはほぼ戻れない。

「ボスや勤め先の理解がないと、チームドクターは務まりません。ボスは『いい経験になる。行ってこい』と快く送り出してくれています。その上でサンウルブズの遠征は出張扱いにしてもらっている。だから有給です。本当にありがたい。もちろん、僕の家でも、奥さんがしっかりサポートしてくれています。周囲には感謝しかありません」
 田中が「ボス」と呼ぶのは勤務先の大阪警察病院の整形外科部長・林田賢治。出身大学も専門も同じである上司は、プロ野球・阪神タイガースのチームドクターでもある。
 林田は自身の経験から、医局を離れた中で持つ世界観やコネクションを大切に思い、後輩にもそれらを持たせるようつとめている。

 田中は薬剤師の母の勧めもあって医師を目指した。愛知・滝高校から大阪大学医学部に入学。182センチの長身は目を引き、医学部ラグビー部に勧誘される。
「高校時代は野球をやっていたので、それ続けるつもりでした。でも、先輩に連れられて、グラウンドに行って、ラグビーボールを持った瞬間、『これはやらんといかん』と思いました。今でもなぜだかわかりません」
 田中は楕円球との運命的な出会いを笑う。
 さらにその巡り合わせは続く。
 監督の吉村康秀が、御所工(現御所実)監督だった竹田寛行と友人だった。奈良県南部の学校に練習や試合で通う中、知遇を得る。
「プレーヤーとしてもよかった。体幹が強く、走れました。知り合いを通して関西代表にも推薦したことがあったくらいです」
 竹田はLO田中をよく覚えている。

 その縁は切れない。田中が専門を決める時にも竹田が影響する。最初は阪大の看板でもある心臓外科を望んでいた。
「偶然、希望提出の締め切りが1日延びたんです。そうしたら、たまたま先生から電話がかかってきました。その時、『整形やってえなあ』って言われて、それで決めました」
 田中は阪大卒業後、大学院にも上がる。2005年から2年間は、オーストラリア・メルボルンで再生医療を学んだ。その間も年賀状のやり取りなど交流は残る。そして、10年ほど前からラグビー部の医療を担当する。田中にとってチームドクターの経歴が始まる。
 全国大会準優勝3回の戦績を持つ56歳の竹田には、一回り下の田中へ謝意がある。
「彼は『先生』と呼ばれる立場になったのに、偉ぶるところが1つもない。いつも謙虚。そして、僕たちに色々なものを還元してくれています。ありがたいことです」

 田中は現在、御所実、近畿大学などのチームドクターを請け負う。御所実では1人で仕事をこなすが、他は5人程度の複数で臨む。
 サンウルブズでは仕事が多い。
 @ケガ人を見る。重傷なら病院に連れて行き、検査に立ち会う。
 Aプレー続行の可否を決め、ヘッドコーチに報告する。重傷の場合は離脱させ、チームに残る場合は復帰への道筋を立てる。
 Bケガのリハビリはトレーナーらと協調関係を維持しながら取り組む。
 Cドーピングに対する講義やHIA(Head Injury Assessment)が導入された脳震盪への対応をする。
 おおまかにはこの4点が中心になる。
「今年は去年の経験も反省もあるので、それらを生かして、きちっとした仕事ができるようにしたいです」
 現在、開幕に向け、選手たちの既往症のリストアップや毎日更新される『医療日報』の準備など、ぬかりはない。

 サンウルブズは2月18日、トップリーグオールスターズとプレシーズンマッチを戦う。そして、1週間後の2月25日には2017年シーズン初戦として、東京・秩父宮で優勝候補のハリケーンズを迎え撃つ。
 田中は2月12日、福岡・宗像から北九州に合宿拠点を移したチームに合流した。
「選手たちにはケガをしない上で、勝ってほしいですね。アルゼンチンに勝ったときはめちゃくちゃうれしかったです」
 昨年4月23日、サンウルブズはジャガーズ(アルゼンチン)を36-28で破り、歴史的初勝利を記録した。田中は医師を示すビブスをつけ、秩父宮のグラウンドの上でその快挙に立ち会う。
 今年願うのは、選手の無事と、チームにとって2勝目、3勝目にとなるさらなる白星の積み上げである。
(文:鎮 勝也)

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チームドクターをつとめる御所実の竹田寛行監督(右)と



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