コラム

再燃する「ラグビー日本代表にはなぜ外国人選手がいるの?」問題の解  向 風見也(スポーツライター)

ラグビー日本代表の絆は強い(撮影:早浪章弘)


 国内では、ラグビー日本代表に関する話題で持ちきりらしい。

 9月19日、イングランドはブライトン。ワールドカップ(W杯)で過去2度の優勝を経験した南アフリカ代表を下し、大会24年ぶりの勝利を挙げたのだ。その報せは翌日の各紙一面を飾り、ワイドショーなどでも大きく取り上げられ、かねてから楕円球の話題を扱ってきた某メディア関係者は、「世の中はゲンキンです」と現地取材中の当方に電話をよこしてくれたほどだ。こんなこと、職歴9年目で初めてである。23日、グロスターでのスコットランド代表戦は10-45と完敗。不自然にも映る熱量が一気に収束しないことを祈るのみだ(本稿執筆中、現地TVマンの情報によれば「さらに過熱」とのこと)。

 一般的な関心度が高まれば、競技に根付くいわゆる「素朴な疑問」が再燃するのも世の常だ。ラグビーのそれは、「どうして日本代表に外国人が多いの?」だろうか。ここ数日のフィーバーに乗りかかった当方への取材依頼のなかには、それと関連するものもなくはなかった。

 結局のところ、「ルール上OKで、指揮官がそういう選手をチョイスしているから」と応じるほかない。

 統括団体であるワールドラグビーのルール上、ラグビーの国代表(厳密には所属協会代表)になる条件は「その国の出生者」か「両親、祖父母の1人が当該国で出生していること」か「その国に3年以上連続で居住した者」で、他国代表未経験者なら誰でも代表になり得る。民族や国籍は問われない。乱暴を承知で言えば、選挙権のない住民にもジャパン入りのチャンスはある、ということになる。以前は「他国代表経験者でも可」という時期もあり、最近も代表経験者が別の国の代表になれるルールができた(セブンズが五輪競技となったことで代表資格変更が可能に。国籍は必要不可欠。前の代表の最後の試合から定められた出場停止期間を消化したのち、セブンズワールドシリーズに4大会出場、などの条件がある)。

 それでも島国だからか、日本には「国外出身者が多い代表には感情移入がしにくい」という意見がある。同種の「喝!」もある。今回のブームを受けて生じた「なぜ外国人…」という議論に対して上記ルールや「外国人だって日本の魂を持っている!」といった説明を重ねている方も、数年前は意外と「最近、日本代表には外国人が多い」とこぼしていたりもする。要は、そんなようなものなのだ。

 各代表が多国籍軍になるのはラグビーの常識。そうとわかっても、相容れない。ならば、チームの戦略術や国外出身者1人ひとりの能力を鑑み、「ラグビーの強い国の出身者だからといって本当にその人が必要か」という視点で観察してはどうか。

 ただ、就任4年目のエディー・ジョーンズ ヘッドコーチは「世界一のフィットネスとアタッキングラグビーでトップ10(のちにW杯8強入りへと上方修正)を」と提唱。しかし、環太平洋諸国の力自慢にその「アタッキング」の起点、つまり球を奪い合う局面を妨害されたため、当該の働きを担う背番号「4」から「8」のポジションに相次ぎ外国出身選手を招集。今大会で「6」をつけるリーチ マイケルはキャプテンとしてチームの軸となり、同じく「7」のマイケル・ブロードハーストは2013年6月のウェールズ代表戦(来日メンバーは控え中心も、当時の欧州王者)の勝利の立役者となった。

 初期段階では、一部の海外出身選手(および大型の日本人選手)が「国内で通用してしまっている高い姿勢でのコンタクト」をする傾向があったが、現在は相手とヒットする瞬間に腰を落とすなど、ジャパンの戦術に即したスキルを身体化しつつある。現チーム発足初年度にフランカーを務めた佐々木隆道は、しっかり、こう言い切っていた。

「日本代表のバックロー(背番号「6」から「8」)は、そういう、人なんですよね。これは国籍に関係なく。勝つためのメンバーです。自分は、そこのレベルに全然、行ってないと思うんです。普通のパフォーマンスではなく、いいパフォーマンスを出さないと、テストマッチ(国際間の真剣勝負)では勝てないんです」

 なお、世俗的に言われる「日本の魂」を持っているかどうかは、個人的には問わないことにしている。センターとして守備時の連携と激しさを買われるクレイグ・ウイングは「エディーに誘われたからジャパンに入った」という旨を明かしており、いま、限られた練習参加数でも戦力とされている。リーチ主将は「ラグビーを仕事だと思っている」からこそ「中途半端なことは絶対にしない」とし、こちらは外国人ではないが、南アフリカ代表戦で活躍した山田章仁は、日本代表としてプレーするモチベーションを「(現状のメンバーとの)チームでプレーできること」に求めている。

「国を背負って戦うので負けてはいけない。代表になるとそれは改めて思います」

――自分がそんな風になるなんて、想像つきましたか?

「思っていましたよ。結構、チームのためにやるというのは嫌いじゃないし」

 目の前の仲間のために、自分のために、チームの決めたプレーと相手を打ち負かすプレーを続けられさえすれば、その人はラグビー選手である。指導者は各人の職責や信念に基づき、自分なりにもっともいいラグビー選手を選んでチームを作る。

 以下、余話。

 南アフリカ代表戦後、ジャパンの五郎丸歩副将がツイッターでこう記した。

「ラグビーが注目されてる今だからこそ日本代表にいる外国人選手にもスポットを。彼らは母国の代表より日本を選び日本のために戦っている最高の仲間だ。国籍は違うが日本を背負っている。これがラグビーだ。」(原文ママ)

 そしてその意図を、以後の公式会見で明かす。あまりに過不足なく透き通る言葉の連なりなので、やや整理したうえで紹介させてください。

「我々は2019年(日本開催のW杯)のために日本を飛躍させよう、日本のラグビーを復活させようと、そのために2015年に歴史を変えるんだ、と、4年間しっかりと準備をしてきた。2019年に向けて、我々がどういう道を進んでいくか。そのなかで、クリアしなきゃいけない問題だったと思うんですよね。ラグビーは特殊なので、どうしても何で外国人が入っているんだという観られ方をする。ただ、メディアの方にそこへ注目してもらうことで、『ラグビーはそういうものなんだな』と日本人として理解しやすくなると思いますし。そういった経緯で、あのようなコメントを出しました」


【筆者プロフィール】
向 風見也(むかい・ふみや)
1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年よりスポーツライターとなり、主にラグビーに関するリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「スポルティーバ」「スポーツナビ」「ラグビーリパブリック」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会も行う。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)。
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